第24話 レッサー・デーモン

マスキロが魔法をかけると倉庫の中の声が聞こえてきた。

たしかに二人で話しているように聞こえる。


A「準備は整ったな。これだけ香辛料を独占すれば、コシネロに勝ち目はない」

B「あとはお前の料理次第だ」

A「それは大丈夫だ。わざわざ料理対決に出るコックを食っちまったんだから」

B「料理対決に優勝し、祭りで振る舞う料理の中に毒を仕込むとは、なかなか手が込んでいるな」

A「その方が手っ取り早くていいだろう」

B「仲間も連れて行くのか?」

A「俺と料理人二人が出場する。お前も来るか?」

B「俺はやることはないが……。まあお前が勝つところを見届けてやろう」


ここで会話が終わり、しばらくすると倉庫の通用口が開いて、一人の男が出て行った。オレ達は死角に移動していたので見つかることはなかった。


男の気配が完全に消えてから、マスキロが口を開いた。

「あれはレッサー・デーモンだ。 まあデーモンの中では小物だな。それでも普通の人間では太刀打ちできないだろうが」

オレはマスキロに尋ねた。

「コックを食ったとか、どういうことだ?」

「奴らは特殊能力を持ったレッサー・デーモン・ディスガイズとレッサー・デーモン・インビジブルだろう。レッサー・デーモン・ディスガイズは人間を食う。そして食った人間の容姿や特技を自分のものにしてしまうんだ」

マスキロは声をひそめてこう続けた。

「コシネロの対戦相手はもうこの世にはいないということだ。弟子の料理人もおそらくは、な」

マスキロを除いて、オレ達は互いに目を見合わせた。


オレは尋ねた。

「もう一つのモンスターは何だったんだ?」

「レッサー・デーモン・インビジブルのことか? 奴は透明なだけだ」

透明なだけ! オレは透明な敵と戦う自分を想像し、ミョルニルが空振りし続ける姿を想像した。


なんにせよモンスターが去ってしまったので、討ち入りはキャンセルになった。

しかし今夜のうちにやることが残っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る