いざ、ご挨拶!

「ハロー! ナイストゥーミートゥートゥー!」


女性が答えました。


あ、よかった意外や意外、好印象。


こんな奇行して来た奴なんざ、その背中の槍で貫かれてもおかしくないくらいなのに。


いや、よかったですよ。


……いやよくないですよ、待って下さいよ。


見逃しません、いや聞き逃しませんよ私は、目ざといんですから、いや耳ざといですから。


なんですか耳ざといって。


新しいワードが生まれしたよ、今年の流行語大賞は総嘗めですね。


……そんなことはどうでもいいんですよ。


今、この女性なんて言いましたか?


ナイストゥーミートゥートゥー、ですって?


……グローバル。


第一村人、否、ゲーム人が海外の方ですか。


いいじゃないですか、素敵ですよ。


ゲームで広がる人との絆。


ゲームは国境をまたぐ希望の橋になる。


……なんのキャッチコピーですか、防災ポスターですか?


まあ、少し面食らっちゃいましたけど……へえ、海外の方もこんなゲームやるんですね。


あっ、こんなゲーム、って言っちゃった。


禁句じゃないですか、問題発言ですよ今のは、放送事故ですよ。


SNSで拡散されて、電脳世界のおもちゃ箱に仲間入りですよ。


違いますよ、こんな……素晴らしいゲーム、って言おうとしたんですよ。


……言い訳がましい。


自身の失敗は素直に認めましょうよ。


恥の旅はかき捨て。


あっ、違う逆ですね、ちょっと動揺していますね。


一回、深呼吸しましょうか。


……。


……はい、で、どうしますか?


私、英語の成績はごみ屑もいいところなんで、これ以上この方との会話の続行は厳しいですね。


……去りますか。


「グッバイ!」


私は笑顔で手を振りながら、そう言い放ちました。


……変人。


ド変人じゃないですか、話しかけておいて、二言目がお別れの言葉なんて。


こんな簡素な送別会ないですよ。


卒業生全員、開いた口が塞がらないですよ。


……まあ、一期一会って感じでこの場を後にしましょうか。


あっ、女性が手を振り返してくれている。


……めっちゃいい人ですね、涙が出てきましたよ。


送別会に涙はつきものですからね。


私は号泣しながら、手首が引きちぎれんばかりにさらに手を振りました。


……やっぱ変人じゃないですか。


体液振り撒きながら手を振って、何がしたいんですか、不審者じゃないですか。


まあ、気を取り直して遊んでいきましょうか。


せっかくのVRMMOなんですから、まずはやっばり大きく体を動かしたいですね。


何が言いたいか?


……フィールドに出てみようじゃありませんか、早速。


私は数分迷った挙げ句、フィールドへの入り口を見つけました。

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