第9話 点と点を繋ぐため


 おじさんに連れられた悠夜達は広い敷地の奥にそびえ立つ屋敷に着いた。

 おじさんはインターフォン越しなのにも関わらず、中に聞こえるぐらいの大声で話し出す。


「お坊っちゃまー!ご飯を作りにきましたよ!あと、お客様がお見えですよー」


 すると、ドアの鍵は自動で開きまたもや悠夜達はおじさんについて行く。

 屋敷の中はさすがお金持ちとといったように、煌びやかな装飾や絵画、骨董品などが並んでいた。


「なあ、これいくらするんだろうな」

「そんな事今はどうでも良いよ」

「さあ、着いたぞ」


 ある部屋の前で止まったおじさんは悠夜達に心構えの準備をする時間をくれた。

 ひと呼吸ついた悠夜達はおじさんに合図を出しドアを開けてもらう。広い食堂のような場所には大きいテーブルと沢山の椅子が並んでいた。

 しかし、そこには1人しか座っていなかった。


「お坊っちゃま、今日はカレーを作りますよ!」

「ありがとう……と言いたい所だが、その子供達は誰だ?」

「お坊っちゃまに会いたいって言うもんですから連れてきちゃいました」

「またそうやって勝手な事を……俺が生きてるのが知られたら不味いことぐらい分かってるだろ」


 正論を言われてしまいたじろぐおじさんだったが、そんな事をお構いなしに悠夜は話を切り出す。


「何で生きてるのが知られたら不味いんですか?」

「それよりも君は誰だ?どこかで会ったか……?」

「俺の事なんかどうでもいいんで答えてくれませんか?」

「困ったな……何でこんな子供を招き入れたんだ?」

「いや、やたらお坊っちゃまに興味がお有りでしたので、お坊っちゃまの暇つぶしになるかなと……」

「さっさと帰らせてくれ、俺には時間がないんだ」

「そんな自分勝手な事を言って許されると思ってるんですか!貴方のせいで黒い雨が降るようになったんじゃないですか!!」

「こ、こらお前!お坊っちゃまになんて口を聞くんだ!」


 悠夜の中では黒雨事件への謎が解ければそれで良いと考えている。

 だが、その焦りからか相手にとってみれば反発しか生まれない。そんな中智史が珍しく大人な対応をとった。


「鴉御さん、すいません!どうしてもこいつが黒い雨について知りたがってるんです!教えてやってくれませんか?」

「何やってんだよ智史!こいつに謝る必要なんてないんだぞ!」

「父ちゃんが言ってたんだよ、お願いしたい事があったら頭を下げろって。ほら悠夜も一緒にお願いしようぜ」

「なんで俺まで……」

「ん……今悠夜って言ったか?」


 秀久は思わず悠夜の名前に反応した。

 しかし、悠夜達にはなぜその名前に反応したのか見当もつかなかった。


「あの時の悠夜か!」

「な、何ですか突然馴れ馴れしく……」

「大神悠夜……だろ?」

「え、どうして俺の名前を……」

「ちゃんと生きていたか……」


 喜びと安堵に包まれる秀久と、知らない相手に名前を知られて気味悪がる悠夜。


「まあまあ、落ち着くんじゃ。わしがお茶入れてくるから座ってなさい」


 おじさんのナイスアシストでにより、2人は一旦落ち着いた。

 そして再びおじさんがお茶を持ってくるまで沈黙が続く。人数分のお茶が目の前に配り終えられ、秀久は一口飲み話を続ける。


「どこから話そうか……そうだ、黒い雨について聞きたいんだな?」

「そうですけど……」

「そんなに君の事を知ってるのが気になるか?」

「そりゃ知らない人に知られてて良い気分じゃないでしょ」

「それもそうだな、じゃあ君の事から話そうか」


 そう言って椅子を座り直し悠夜の顔を見て話し出した。


「君の小さい頃に死にそうになっていた所を助けたんだ」

「……え?死にそうに……?」

「そうだ、君が生きていてくれてよかったよ」

「何で俺は死にそうになってたんだよ」

「まあ、ある儀式の生贄にされそうになってた」

「は?儀式?」


 悠夜は自分の事を知っている話を聞いたはずなのに、儀式やら生贄やら訳の分からない言葉ばかり出てきて整理できない。

 それでも秀久は話を続ける。


「ある村の儀式の話だ。それもこれも黒い雨の話をすれば分かるだろう」

「黒い雨まで関係してんのかよ」

「そうだ、あれは18年ぐらい前だったか……」


 秀久は過去の話を口にする。

 辛い事なのか、時折言葉を詰まらせる所があったがその思い出は昨日の事のように事細かに語られた。

 それは黒い雨の謎が詰まっており、儀式、捧げしモノ、黒い雨、その全てが今ひとつに繋がりだす。

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