第3話 不気味な視線
2人は次のページをめくり驚愕した。
「おい、悠夜これって…」
「あぁ、これは…」
せっかく見つけた「黒雨事件の記録」
しかしその中身は全て黒塗りされていたのだ。
「ごめんな….まさか中身が無いとは……うぅ………」
智史はとてつもなく落ち込んでしまう。
それと同時に悠夜はこんなにもいいやつなんだなと再認識した。
「智史!気にするなって!今日は掃除しに来ただけだって言っただろ?」
ホッとした顔をした智史はまた泣き出した。
「智史〜?ちょっと来てー!」
1階からお母さんであろう声が聞こえてきた。
「……ちょっと待ってて」
そう言い残し智史は部屋を後にする。
しかし、2分も経たないうちにものすごい勢いで智史は戻ってきた。
「母ちゃんが悠夜も一緒に晩御飯どうかって!」
「晩御飯?そんな急にいいのか?」
「母ちゃんが張り切っちゃってるんだよ!」
「そ、そうか……じゃあせっかくだしご馳走になろうかな?」
そう言うと智史の顔はさっきの泣き顔からは想像できないぐらいの笑顔になった。
悠夜はこんなに笑顔な智史を見るのは初めてだった。
1階の食卓に案内された悠夜は初めて智史のお母さんと会ったが、驚いたのはその綺麗さだ。
智史は馬鹿ではあるが、かなりカッコいい部類だ。
その親ならば、その子ありと言った具合に悠夜は合点がいった。
「ありがとうね、悠夜くん」
智史のお母さんは優しく微笑みかけた。
思わず見惚れてしまう悠夜だが、ここである事に気がつく。
「あれ?智史、お父さんは?」
3人分の食事しか用意されてない事に疑問を持った。
「うちのお父さんいつも忙しいから智史には寂しい思いをさせちゃってるのよ」
悠夜は、智史が普段明るく振る舞っているが意外と寂しがりやなんだなと少し優しくしようと思った。
「さあ、今日は腕によりをかけたからいっぱい食べってってね」
「「いっただきまーす」」
掃除の疲れからか、はたまた智史のお母さんの料理の腕がいいのか2人はどれも美味しそうに平らげる。
「あ、そうだお母さん。この本貰っていきますね」
「どうぞどうぞ。どうせ要らない物ばかりだから遠慮せず持ってって」
話弾む和やかな食卓に人影が近づいてきた。
「お主か、黒い雨について知りたがってるという智史の友達は」
「え!?あ、はい、そうですけど…?」
突然話しかけられびっくりした悠夜の背後にいたのは、智史のおばあちゃんだった。
「もう!ばあちゃん!急に話しかけるからびっくりしてるじゃん!」
「その者よ黒い雨について深く知るではない」
智史の言葉はあまり耳に入っていないようだ。
だが、悠夜は話を続けた。
「え……なんでですか?」
「知らない事を知る必要はないからじゃ……」
知らない事を知る必要がないとはどういう事なのだろうか?
「ばあちゃん!せっかく友達来てるんだから邪魔しないでよ!」
智史はおばあちゃんを部屋の奥へと連れて行った。
「悠夜くんごめんなさいね。悪い人ではないの…でも古い人だから…ね?」
申し訳なさそうにお母さんは謝った。
「いえ…全然平気ですよ。学校とかでもなんでそんな事興味あるんだってイジメられたりとかしてますし」
悠夜なりのジョークのつもりだったが、重たい空気が流れ続ける。耐え兼ねた悠夜は、
「でも、智史くんが仲良くしてくれてるんで全然辛くないですよ!」
「ありがとうね…これからも智史と仲良くしてあげてね」
智史の家もいろいろ大変なんだなと友達は大切にしようと思った。
一部を除き楽しい食事が終わり、玄関で別れの挨拶をする。
「今日はありがとうございました。ご飯美味しかったです!」
「いいのよ、また智史と一緒にご飯食べてあげてね」
「悠夜!また明後日な!」
少し違和感を覚えた悠夜。どこからか視線を感じる。
玄関の奥、長い廊下の奥を目を凝らして見てみる。
暗い中にピントが合った時、おばあちゃんがこちらを睨んでいるように見えた。
思わず目を背けてしまった悠夜は、あまり考えずに智史の家を後にした。
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