第5話 お嬢様は三種の神器を調達する
ギースが目覚めて、アンジェリカはますます元気になった。
有り余る財力とツテを使い、彼のために特注の点滴とパジャマ、スリッパを揃える。
「これこそ、彼の魅力を最大限に引き出す三種の神器よ!」
「お嬢様、神に謝ってください」
「なんでよ。神様だって、彼の咳き込む姿を見たら惚れ直すに決まっているわ」
周囲の同意は得られないものの、理想の人を見つけたアンジェリカは毎日を楽しんでいた。
目覚めてひと月も経つと、ギースは杖をつきながら少しくらいの散歩はできるようになる。
彼を支えながら、二人で別荘の敷地内を散歩するのは至福のひととき。
アンジェリカは緩みきった表情で、ギースに寄り添う。
「理想的なデートです」
「これが!?」
「私が一生、支えますからね」
「一生このままでいるのはごめんだ」
つれないギース、笑顔で話しかけるアンジェリカ。
使用人たちの目も気にせず、彼女は本気でアプローチを続ける。
順調に回復傾向にあったギースだが、ある日の午後、それは急変した。
魔法使いには使い魔がいるのだと言った彼は、森で暮らしているであろうそれを呼び出そうとし、指笛を鳴らした。
ピィという高い音に反応し、森の奥から二羽のふくろうが飛んでくる。
アンジェリカは「すごいわ!」と感動し、ふくろうを歓迎したのだが……
隣ではギースが胸を抑えて蹲っていた。
「ギース様!?」
「くっ……!」
慌てて医師に診てもらうと、肺の一部を損なったらしい。
アンジェリカは拳を握り締め、悶えた。
「すごいわ……!か弱く細い人に多い肺気胸を患うだなんて……!細胞レベルで私のタイプ!」
「お嬢様、お気を確かに」
侍女の言葉など、アンジェリカの耳には届かない。
またしばらくベッドの上の住人になってしまったギースは、自分の貧弱さに遠い目をしていた。
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