48『あーあ、ばかみたいだった」
セリナが張り詰めていた息を漏らした。僕もそれに習った。緊張して肩が強張っていたことが分かる。ぱっとセリナが手を離した。そして不自然な程明るく言う。
「あーあ、ばかみたいだった」
くるりとセリナが僕の方を向いた。
なぜか、セリナも僕もセリカが目覚めることを待っていた。信じて疑わなかった。
根拠も無いのに何故固く信じていたんだろう。こんなことで目覚めるなら、とっくにセリナがやってのけている。僕も項垂れて手を離そうとした。惜しむように、涙がまたぱたぱたと手の上に落ちた。
――……その時。
何かが、僕の手の中でぴくりと動いた気がした。本当に気をつけなければ分からない程ほんの少しだけ。
「……セリカッ!?」
心底驚いて彼女の手を強く握る。正直、驚くというより恐ろしさの方が強かった。セリナも大きく目を見開いて駆け寄る。
「お姉ちゃん!!!」
僕とセリナがセリカの一挙一動全てを見逃すまいと固唾を飲んで凝視する中、セリカの瞼が微かに震えた。本当に、本当に弱々しく。やがて、おそろしく重いものを持ち上げるようにゆっくりと、彼女の目が世界を映し出した。
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