最終話 ただそれだけの、物語


「凛も大きくなったなー。そろそろ好きな女の子でもできたんじゃないか?」


「パパじゃあるまいし、きっとまだよ」


「な、何を⁈ ママだって人のこと言えないんじゃないかな?」


 ニヤリとからかいの意を込めて見つめる。


 するとママはドスの利いた声で、


「あ?」


「すみませんすみませんッ!」


「あぁーパパがまたママの尻に敷かれてるー!」


「我が息子よどこでその言葉を知った⁈」


「パパー!」


「……あら残念ね」


「ママー‼」


 泣きつくようにママにすがり寄ったが、華麗にスルー。 

 なんという身のこなし方。

 さすが長い年月を共にしてきただけある。


 まぁ俺としては悲しいんだけどね?


「あっでも僕、好きな子できたよ!」


「「な、なにっ⁈」」


 これが遺伝子という奴か……恐ろしい。 

 だが凛が俺たちの子だと実感できて嬉しいという気もして……なんか複雑だ。


「だ、誰だ⁈」


「幼馴染ー!」


「幼馴染、だと⁈」


「やっぱり子は親に似るってほんとなのね……」


 ママが呆れたようにため息をつく。 

 ちなみにママも、幼馴染と結婚してるからね? 凛の半分はママだからね?


「今からそのはーちゃんと近くの公園で遊んでくるね!」


「おう!」


「車に気をつけてね」


「うん!」


 凛が勢いよく家を飛び出していく。

 そういうところは俺に似ているが、顔は完全にママに似ている。

 おかげで超美少年。俺に似なくてよかったわ。


「ほんと、凛のこういうところはパパにそっくりね」


「可愛いところは、ママにそっくりだけどな」


「も、もう! 律ったら……」


「加恋の照れた顔、すげぇ好きだなぁ」


「だ、ダメだってそういうの……凛がいないからって、急に……」


「名前呼び始めたのはそっち。仕掛けたのは加恋だぞ?」


「り、律のばか!」


 肩を叩いてくる。

 だが全く痛くない。


 ってかむしろ肩たたきとしては超優秀。

 デスクワークで凝っている肩がほぐされていった。


「それにしても、まさか凛が幼馴染を好きになるとはな」


「やっぱり、私たちの子供よね」


「だな」


 子供に自分との共通点を見つけると、少し嬉しくなる。

 たとえ初恋の相手が同じ幼馴染というだけでも、俺たちは微笑ましかった。


「加えて相手があの神夫婦の子供とか、運命しか感じねぇよ」


「ほんと私たち、見えない糸で繋がってるんじゃないかって思うくらいに離れないわよね」


「まぁ薄々思ってたけどな」


 すぐに高校時代に戻った気になれるので、おじさんとしてはとても嬉しい。

 たださすがに引っ越して来たら隣の家が神夫婦の家だと知った時は驚いたが。


「あっそういえば、上星たちの結婚式呼ばれたけど、行くよな?」


「そうね。まさかあの二人が結婚するとは思ってもなかったけど」


「そうか? 俺は上星ならやってくれると思ってた」


「ほんと息ぴったりね」


「ははは」


 あの二人の結婚式に出れるのはとても嬉しい。

 でもまだららは独身を楽しんでいるようで、最近は愚痴ばかりが届く。


 おかげで最近は加恋の機嫌が悪いです。

 不幸のスパイラル起きてんだよなぁ……。

 まぁ、嫉妬してる加恋最高に可愛いけど。


「幸せになったよな」


「そうね。でも……家のローンを返済しないと」


「急に現実的だな⁈」


「早く稼いでよね、パパ」


「……任せろ、ママ」


 まだまだ人生、これから。

 ありがたいことに、先は長い。




   ***




「ねぇはーちゃん」


「ん?」


 近所の公園で遊ぶ凛とはーちゃん。

 花を愛でているはーちゃんに、凜は小さな拳をぎゅっと握って言った。



「僕、はーちゃんと『ケッコン』したい!」



 なんの脈絡もなく放たれた告白。

 

 凜はぷるぷると小刻みに震えつつ、はーちゃんの目をじっと見つめた。



「うん、いいよ! 『ヤクソク』ね!」



 はーちゃんが花にも負けない笑顔をいっぱいに咲かせてそう言った。

 凜も又笑って、小さな手を握り合った。





 叶うはずがないと嘲笑される、幼い頃に交わした約束。

 だけど俺たちは、それが叶うのだと知っている。



 ――初めから、こうして一回でちゃんと『ヤクソク』を交わせたら。



 きっとあんな風に、すれ違うこともなかっただろう。


 だけど、あんな風にすれ違わなければ、俺たちはこの未来にはいない。

 結局、いつだって俺たちは未来を見ている。

 過程はどうあれ、過去が、今が、未来が幸せならそれでいい。



 

 この物語は幼い頃の『ヤクソク』を果たす物語。


  

 そう、ただそれだけの、物語だ。



                                 完




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


あとがき


幼馴染に一万回フラれたので諦めたら急にモテ始めた


遂に完結しました!

ありがとうございます!この作品を完結させられたのは、読んでくださった読者の皆様のおかげです!本当に、ありがとうございました!


この作品は、本町かまくらの一年目の代表作となりました。

この作品でたくさんの方々と出会い、成長することができたと思います。

まもなく本町かまくらの二年目が始まりますが、一年目を超えられるような最高に面白い作品を投稿できるようより物語を愛していこうと思いますので、応援よろしくお願いします!


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


感想な評価などで皆様の声を聞かせていただけると、とても嬉しいです!

また、お気に入り登録もしていただけると、俄然やる気が出ます!

さらにTwitterもやっていますので、名前から飛んでフォローしていただけたら幸いです!


重ね重ねになりますが、この作品を読んでくださり、ありがとうございました!

本町かまくらの次回作に、ご期待くださいまし!


            2月14日の深夜3時。一人パソコンに向かって。


                             本町かまくら

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