第22話 なんか俺急にモテ始めたんですけど!
まさか加恋が追ってきていたとは……どおりで素直すぎて怖いなと思ったらそういうことだったのか。でもなぜわざわざ追ってきたのだろうか。
その理由は考えてもよくわからないけど、今はとりあえず目の前に繰り広げられている修羅場みたいな雰囲気をどうにかすべきだろう。
「それにしても朝仲良く登校とは……律とあなたは一体どういう関係なの?」
「……特別な関係ってことには間違いないですね。紅葉先輩よりも」
「と、特別な関係?! そ、それは……付き合っていたり……とか?」
「……まだ、ですかね。まだ、ですけど」
ヤバイ、女の人、コワイ。
でもなんで加恋までムキになっているのだろうか。というかそもそもこの、俺を美少女二人が取り合ってるんじゃないかと勘違いしちゃう状況何なんだよ。
ついに俺もラブコメの主人公になってしまったのか? そんなの嫌だよ! 俺普通にラブコメしてぇのに!(一万回告白してる時点で普通じゃない)
「まぁお前らそんなバチバチしないでさ、とりあえず学校行こうぜ?」
「「ちょっと黙ってて」」
「……仲がよろしいこと……」
何この修羅場。さっきから「律は誰のもの」問題が議題に上がってるんだけど、俺は俺のもんだぞ? というかなんで俺取り合ってんの君たち!
さっきから周りの視線が痛い。明らかに今俺たちは注目の的だ。
そして残念ながら、口論の火は俺にも飛んできた。
「先輩はどっちとデートしたいんですか! もちろん可愛い後輩部門金賞の私ですよね!」
そんな部門あってたまるか! 勝手に作るな!
ほんと、もうこの訳の分からないバトルに俺を強制参加させないで欲しいんだけど。
「り、律! こ、今回は特別にで…で…でー……してあげるから私を選びなさい!」
言えてないから! デートって言えてないから!
というかなんで二人とも若干上から目線なんですかね。もうこの状況になったら二人ともお断りしてぇよ……
「い、いや……その……俺には……」
俺が適当にはぐらかそうと思ったら、それを察した二人がぎろりと俺を睨んできた。
しばらく何も言えないで黙って「あははは」と笑っていたら、また勝手に二人がバチバチし始めた。
な、なんでこの二人こんなに仲悪いんですかね……
「か、関係の長さで言えば私の方がその……な、長いわよ! 律と昔から遊んでたし……」
「積極性で言えば私の方が数段上です。毎日先輩に愛をお届けしてますよ? 紅葉先輩はどうなんですか? そもそも愛あるんですか?」
「……ぐぬぬぬ……」
一部の話の内容を聞いてみれば、ららが若干優勢のように思える。
というかそろそろやめようか? もしかして二人とも俺のこと好きなんじゃないのって思い始めちゃうから。勘違い男になっちまうから!
二人のバトルにややギャラリーが付き始めた。
それもそう。この二人は学校随一の美少女。人気は底知れず。そんな二人が珍しく関わっており、さらにそこに男がいるとなると「何事だ?」と思うのも当然のこと。
これを俺は避けたかったのに……なんで回避できないんだ俺は!
最近ラブコメの神様に愛されすぎてるぞ俺! この愛はいらねぇ……
もうこれは俺の手に負えないと思った。だからこそ、この場を沈めてくれる奴にSOS。
思わず「ヘルプミー!!」って叫んじゃいそう。
そんな時に、俺に救世主? が現れた。
「神之木さんおはようございます。どうしたんですか? そんな困った顔して」
「……白幡さん?」
後ろを振り向くと、いつも通り天使の笑みを浮かべた白幡さんが立っていた。
白幡さんの登場に、ギャラリーはさらに湧いた。ヤバイ、俺の通ってる高校の美少女がこの場に集結してしまった。
全然救世主じゃなかった。
「はい! 私、白幡新奈です」
「し、知ってるよ……」
「あっそういえば、今日の放課後どこかファミレスでも行ってお話ししませんか? こないだの件について話したくって」
白幡さんがそう言った瞬間、さっきバチバチだった二人が急にこちらの方を向き、目をぎろっと光らせる。
「なんですか先輩! 白幡先輩とも関係持ってたんですか! 完全に浮気者じゃないですか!」
「俺別に誰とも付き合ってないから! ねぇみんな勘違いしちゃうだろ!」
その頃ギャラリーでは――
「うわぁあいつ最低」
「うちの美少女たぶらかして……誰かに刺されて人生を終えろ!」
とガン沸き。
俺の知らないところでどんどんおかしな噂が流れていく……これはまずい。
「あっこれは紅葉さん。今度の定期テスト、絶対負けませんからね!」
「そんなことは今どうでもいいのよ! それよりあんたと律はどんな関係なの!」
「……特別な関係……と言いましょうか」
「おいお前もららと同じこといってんじゃねぇ! 誤解が生まれんだろ!!」
あぁ、どうしてこうなった。俺の高校生活。
傍から見れば、俺なんか急にモテ始めたみたいに見えるんですけど!
でも、こんなのめんどくさすぎるんだけど!!
修羅場という名の火は、燃え上がっていく……
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