第58話 魔王様は小学6年の最後の夏休みを遊び倒したい②
三日間、朝からみっちりと勉強するかと思いきや、寺の仕事もしっかりとあるため決まった時間の間で効率よく宿題を終わらせ粘らない。
朝はお勤め。
その後は境内の掃除。
その後は墓の掃除。
やるべき事は沢山ある。
それらを分担してやっていくことになったのだが、アキラがやってくる昼までに全てを終わらせねばならない。
時間の掛かる墓の掃除に関しては全員で行うことにして、朝のお勤めは男性陣。寺の境内の掃除は女性陣、墓の掃除と畑の水やりは全員で行うことになった。
とはいえ、墓は寺から徒歩三分にあり、掃除だけでは無く墓石への落書きや五寸釘などを発見して大人に対応して貰うのだ。
そこで、朝のお勤めが終わり次第朝食の用意を早々に済ませ、全員で食事を食べ終わった後は勇者と僧侶、武道家に境内の掃除を任せ、終わり次第墓の掃除に加わることを告げて我と魔法使いは徒歩三分の墓の掃除へと向かった。
現代、大半の墓では生花を使うことがなくなりつつある。
と言うのも、枯れた花の掃除などが大変であると言う事が大きな問題なのだが、お供えに関しても生ものに関してはカビやカラス被害にも繋がり生物のお供えもよしとされていない場合が多い。
故に、お供えの花は造花になり、お供えはお酒やジュースと言う簡易的な物が多く、墓の掃除も年に2~3回と言うのが一般的だ。
春の彼岸。秋の彼岸。そしてお盆の三回。
それでも、寺での問題として無縁仏も増えてきた近年。
墓のあり方と言うのも時代の流れとして変わりつつあるのだ。
とはいえ、人は死ねば墓に入る。
弔いとは大事なことなのだ。
「でもさ、オル・ディールでは国の場合、死ねば良くて合同葬儀、そうでない村では適当に土葬だし、冒険者は共同墓地なら万々歳、もしくは草葉の陰が基本だったよね」
「そうですね、オル・ディールではそれが普通でしたね」
「魔族はどうだったのさ」
「魔族は権力ある者も、下働きの者も、鎮魂祭で棟の中で眠りにつく。冒険者で殺された魔族の場合も同じだ。魂は必ず棟に戻り、そこで眠りにつくのだ」
「上下関係が無いのは良いね」
「死後まで上下関係があっては息が詰まるからな」
「その辺り、魔族の方が人道的だよ」
遠くを見ながら溜息を吐く魔法使いに我は表情を変えること無く墓の掃除をする。
確かにこちらの世界では各家庭ごとに墓を持つ。
だが、今は別の形の墓も多いらしく、有名人の墓を見ると中々奇抜な物も多く感心することが多い。
だが、生前好きだったナニカを墓石とするのはアリだと思うものの、追々その墓に入る後の家族は少し複雑ではないだろうかとも思ってしまうのは、我だけだろうか。
まぁ、この世界の墓石も、寺が管理しているにもかかわらず、一定数のカラフルな墓が出来ることがある。
この様に……。
「またお礼参りですか」
「またカラフルに染めたね」
「ある一定数いるんですよ。派閥争いだかなんだか知りませんが、人間の低俗さを改めて思い知りますね」
「死体から金品を盗む事と、死体を何度も傷つけるのと、同義だよね」
「全くですね、嘆かわしいことです」
そう言うと寺専用の携帯を取り出し今世の父に連絡すると、呆れながらも後で対応してくれることになった。
こういうことも含め、寺が悪いと言われるのは釈然としない。
広い墓の掃除が終わる頃、勇者達も訪れて周辺の見回りだ。
去年はそこそこの数の藁人形を見つけたが、果たして今年は行くつて見つかるか。
「第一藁人形発見は誰になるでしょうね」
「僕は得意だよ」
「私はまだ見つけたことが無いな……」
「皆で探してみましょう! 楽しそうですわ!!」
「第一藁人形発見はワシじゃ!!」
こうして、広い寺の隅々まで探索すると、我だけで5体の藁人形を発見することが出来た。
流石魔王……人の欲や負の感情は解りやすいのだ。
結果、皆が集まり誰が一番に見つけたかの報告をしたところ――。
「わたくしは3体でしたわ!」
「ワシは1つじゃ」
「むぅ……私は0だった……魔法使いは?」
「ふふふ、今年の僕は凄いよ? なんと7体」
「「「「おおおおおおお」」」」
「と言うか、この寺に藁人形多すぎませんかね」
こうして、見つけた藁人形に関しては今世の父と祖父に連絡して後は任せることにし、全員で軽く水浴びやシャワーを浴びた後、昼ご飯を挟んでアキラも合流し、夏休みの宿題に取りかかるのだった。
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久しぶりに一気にアップしました。
別途、別の小説も上げていくのでそちらも応援よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ
別途作品名は
「僕の妻は異世界人で、世紀末覇者のようなマッスルボディの可愛らしい妻です。」
宜しくお願いします。
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