エルフの里へ 4
「ところで、ライアスさんは大丈夫ですか?」
街道を順調に進んで行く商隊。
護衛として、僕とリーシェンが荷馬車の左右をそれぞれ受け持ち警戒に当たり、カーナが最後尾を受け持ってくれている。
シアは、一番先頭の馬車に乗り、周辺の索敵をお願いしている。
これは訓練中に判った事だけど、シアの加護は、人の心の感情を感じるものだと思っていたのだけど、それは人に限らず、生きるもの全ての感情が判るみたいだ。
それならと、害悪ある物が周辺に居れば、それを感知できるのではと思って試してみら、本当に可能だったのだ。
そして、害悪の感じ方をなるべく小さくして広範囲の索敵が出来ないかと考えたらこれも可能だった。
しかもその範囲は1000ライルを超えていたのだ。
ちなみに、1ライルは日本でいう4mくらいかな?
「これで、少しはレン様のお役にたつ事ができます!」
と言って喜んでいた。
そんな事を検証しつつ僕達は護衛の旅を続けていたのだけど、その護衛を同じく請け負っているライアスさんの姿が見えなかったので、ダルガンさんに聞いてみた。
「ああ、心配せんでえぇ。あいつ、嬢ちゃん達にこっぴどくやられたもんで、ちょっと落ち込んでしまっての、生きる屍みたいになっておるので、後方の馬車に乗せてもらって復活するのを待っておるのだよ」
「はあ、何かすみません」
「良いって。これに懲りて少しは言葉使いを考えてもらえれば、わしらも変なトラブルをしょい込まなくて済むというものだ。ハハハハ!」
豪快に笑うダルガンさん。
「それにしても、坊主の仲間の嬢ちゃん達、偉く腕がたつようだが、本当に新人か?」
「ええ、一人を除いて、先月冒険者登録したばかりですよ? 護衛任務も初めてですので、ご指導いただけると助かります。」
「なかなかに謙虚だの? あれだけの腕があれば他者を軽んじる者も多いのに、坊主のところは誰一人、高圧的な感じにならない。最近の若い者、いや古株でも同じか、見習って欲しいと心底思うぞ」
何か人間関係で、嫌な事でもあったのかな?
「何か嫌な事でもありました? 若輩者ですがもし宜しければ愚痴程度ならお聞きいたしますよ?」
「はは、坊主は幾つだ?」
「10才です。」
「はあ? そうなのか?」
「はい。」
「ちょっと待て! 冒険者登録は確かに8才でも出来るが、護衛とかは13才以上の成人した者で、最低Dランクの資格が必要なんだぞ!?」
ダルガンさんが慌てておられる。
そういえば、ギルドのパルワさんがそんな事言ってたな。
確かその時、実力的にはSランクらしいけど、いくらなんでもいきなりそれは規定上無理なので、とりあえずBクラスで皆、登録してもらってる。
ただ、その後も色々検討した結果、若干10才でBはおかしいだろう? と父様の進言があったので僕とシアはDクラス、リーシェンとカーナをBクラスとして上書きしてもらったのだ。
そのかわり、シアを除いた僕達は裏クラスとしてAという特殊扱いにされ、非常事態の時はAとして扱われる事になったんだ。
「えっと、新登録時の実力試験でパラディオさんに相手してもらいまして、飛び級扱いにされたんですよ。僕達はFで良いって言ったんですけど、勿体ないとか言われて特例扱いされてしまって」
頭を書きながら苦笑いを浮かべ、事前に考えて置いた説明をそれらしく話しておく。
すると、ダルガンさん、目を見開いてびっくりしていた。
「ぼ、坊主! あのパラディオさんと勝負したのか?」
「はい。」
「それで、認められたのか?」
「はい。」
「信じられん。あの人が直々に相手をするなんて、しかも実力を認められた? 坊主おまえさん何者だ?」
「え? 普通の子供ですよ?」
どこが!! と何故かダルガンさん以外のところからも数名聞こえた様な気がしたのだけど気のせいかな?
「それに、僕はこの護衛が初めてですけど、うちのカーナはああ見えてかなりのベテランでBクラスですから問題ないと思いますよ」
あ、さらにダルガンさんの表情が変わった。
あれ、フルエルさんの顔も相当に驚いているぞ?
「レ、レンティエンス君! カーナって、彼女カーナって言うの?!」
かなり興奮されているけど、どうしたんだろう?
「そうですよ?」
「Bクラスの?」
「はい。」
「・・・・・・・・絶炎のカーナ様」
「はい?」
「お姉様!!」
「はい?」
お姉様! と叫びながらフルエルさんは、自分の持ち場を離れ、後方を受け持っているカーナの場所の猛ダッシュで駆けていった。
「カーナ様ですね? あの絶炎のカーナ様ですよね?!」
「え? は、はいたぶん」
「!!! お会い出来て光栄です! 私フルエルというしがないエルフです!!」
「しがないかどうかは知りませんが、フルエルさんと云うことは知っていますけど?」
「感激です! カーナ様が私の様な平の冒険者の名前を知っていただいているなんて!」
「いや、さっき自己紹介を、」
「お礼に、なんでも言い付けて下さい! お姉様の為なら、この身を捧げても構いませんから!」
「いえ、それはちょっと、それにお姉様って言われても、フルエルさんの方が3つくらい年上じゃなかったかと?」
「そんな、些細な事どうでもいいです!」
「どうか私の事は、フルと及び下さい! あ!もし呼びづらいようでしたら、フでも構いません! 何でしたら、そこのメス、でも宜しいので」
物凄い勢いで迫るフルエルさんに、カーナがタジタジになっていた。
「ダルガンさん、フルエルさんってカーナの知り合いだったんですか?」
「何、言っているんだ、坊主! あの、絶炎のカーナさんだぞ? 知らないのか?」
「いや、知らないとかでなくて、カーナは僕の許婚の一人ですから」
「!!!!!」
うわ! 何か物凄い殺気を感じたと思ったら、フルエルさんが僕に向かって突進して来た!
「レンティエンス君! カーナ様の嫁候補の権利を駆けて勝負しなさい!」
「結構まともな人だと思ったのに、このパーティー変態さんの集まりなのか?」
「失敬な、わしはまともだぞ!」
真顔で答えないで下さい。
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