エルフの里へ 2
「ちょっと、あんた達! 彼女達が怖がっているじゃないの!」
カーナ達が青ざめているのと、シアが僕の影に隠れて震えているのを見て、多分このドワーフのダルガンさんと、光歯のイケメン青年の仲間だと思う、女性が慌て大声を張り上げこちらに向かって来た。
青み掛かった美しい金色のストレートの髪をなびかせる何処か神秘性を感じさせる美しい女性だ。
ん? あの特徴ある耳はエルフ族か。
でも、どこか懐かしい感じのする。
大人の女性というより美少女といった方がしっくりくる人だな。
「ごめんなさい。別にあなた達をとって食おうとしている訳じゃないの。ただ自然とキザったらしい行為をしてしまう顔だけが良い天然馬鹿なの。下心は全くないから恐れないであげてね」
「フルエル、心外だな。私はただ綺麗な女性が困っているのを見過ごせないだけなのだ。さあ、この僕に身も心も全てをまかせてくれれば気持ち良く過ごせる事を保障してあげるぞ。 キラーン!」
うわ、白い歯が眩しい!
ポカーン!
フルエルと言われたエルフの女性が思いっ切りライアスの頭を殴りつけた。
「い、痛いではないか! 私が何をしたとうのだ!?」
「今の言い方おかしいでしょ!」
「そうなのか?」
「そうよ! 商隊に同行して次の街まで一緒に行くと云うだけなのに、身の危険を感じさせる様な言葉が何処に必要があるわけ?!」
「何処が、危険なのだ?」
「お嬢さん達、こいつに言われてどう思ったか言ってもらって良いかい?」
「変態」
「色情魔」
「女性の敵」
「スケコマシ」
「クズ」
「チャラ助」
「軽薄男」
カーナ、リーシェン、シアが、次々と繰り出す容赦ない言葉の攻撃に、額に汗をかき顔を青ざめさせるライアス。
「わ、私は女性の敵なのか? 何時もならキャーキャー言われて喜んでくれるのだぞ?」
「あんた、無駄に顔が良いからね。でもちゃんと良識というものを知っている女性ならこういう反応が普通なの! 判った?」
「そんな、私はそれ程軽薄な男に見えているのか?」
ライアスが、恐る恐る、カーナ達に尋ねると、皆が一斉に首を縦に振った。
あ、ライアスさん、地に手をついて落ち込んでしまったよ。
「カーナ、リーシェン、ちょっと言い過ぎ。シアも駄目だよ」
「でも、でも、レン様」
「駄目、ちゃんと謝る」
僕の言葉に三人は、見合わせ頷くと、息を合わせるようにして頭を下げた。
「「「すみませんでした」」」
するとエルフのフルエルさんが、そんな事いいの、いいの、と手を振って謝る必要ないと言ってくれた。
「ライアスさん、根は悪い人じゃないと僕は思っていますので、落ち込まないで下さいね」
落ち込むライアスさんに僕は手を差し伸べると、あの白い歯が、キラーン! とまた光った。
「そうか、そうか! 貴女は判ってくれるのですな! まだ幼いとはいえ、将来の美しさを隠す事は出来ないその容姿をお持ちの貴女に、私は心をときめいてしまう程に感謝しております! どうかこの私に一時の同行をお許しいただければ、その身の全てを私がお守りいたしますぞ! さあ! 私と一緒になりましょう!」
「!!!!????!! ヒッ!!?」
いつの間にか僕への愛の口上でも述べているようになったライアスだったが、その口上を述べ終わり僕に向かったその厚い胸板を現わにし大きく手を広げた瞬間、その首筋に三つの敵意が突き刺さりかけていた。
「私のレン様に何気色悪い事を述べているのです?」
「我が主人に対しての暴言、この場でにてその口を切り落とさせていただきます」
カーナと、リーシェンがいつの間にか取り出した刀の剣先を爪程の隙間を残し正確にライアスの首へ左右を挟む形で突きつけていた。
その余りにも早い二人の動作に、ライアスはおろか、ドワーフの男も、エルフのフルエルさんも全く反応出来ていないようだ。
「「え?」」
二人は仲間のライアスに向けられた殺気に気圧され全く動けないでいた。
その中を、シアが4つの魔石を嵌め込んである杖を翳しゆっくりと近づいていく。
ライアスの顔の前に突きつけられた杖に集中するシア。
すると魔石の4つが全て輝き、それが徐々に強まって行く。
「ちょ、ちょっと待って! 何? 何なのその魔力は!?」
エルフのフルエルさんが、突然騒ぎ出す。
すると、この騒動に気付いた周辺にいた、商人や冒険者が何事かと集まり始める。
「ちょ、ちょっとシア! やり過ぎ!」
さすがにその魔力量だと、この周辺を焼き尽くす事になりそうだったので、止めようとシアに声を掛けたけど、シアの目が座り、冷たい表情のままで僕の声が届かない。
「よくも、レン様を汚しましたね!」
「いや、別に僕は汚された訳じゃないから!」
「その行い、万死に値します!!」
「いやそれぐらいで死なれては、世の男は殆ど死ななきゃいけなくなるよ?」
「お覚悟を!!」
「わあああああ!!!」
「レン様、どうかいたしました?」
「え?」
さっきまでの冷たい表情が嘘の様に笑顔のシアが僕の目の前にいた。
「え? 今ライアスさんを亡き者にして、」
「そんな事するわけありませんでしょ? まあちょっとお灸を据えましたけど。」
笑顔のままシアがライアスの方に目を向けていたので、僕も見てみると、そこには髪の色が薄くなり口から泡を吹いて失禁してしまっているライアスが大地に膝を付いた状態で固まっていた。
「レン様を汚した罪に比べれば可愛いものですよ。そうですよね、カーナさん、リーシェンさん。」
「はい、あの様な男、わざとで無くともレン様の側にいるだけで罪ですよ。」
「私のレン様に、」
皆、僕の事思ってくれるのはありがたいけど、もうちょっと自重しようね。
とりあえず、フルエルさん達に僕から謝っておこう。
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