社交界 2
会場に入った僕たちは、僕を先頭に母様、カーナ、リーシェンが続き、中央の少し前に用意してあるテーブルへと歩みを進めた。
なるほど、この晩餐会は立食タイプらしい。
もしかして、ダンスとかあるのだろうか?
「これは、システィーヌ殿! お久しぶりでございますな!」
横の一塊の集団から一人の大男が、母様の方に大声掛けながら歩み寄って来た。
其にしても大きい!
赤い中世の軍服に似た服装にに数多くの勲章をぶら下げた、僕が見上げてしまうほどの大男が、母様の前に立ちはだかる。
「ボルトール候爵様、お久しぶりですね。」
いかにも愛想笑いを浮かべ母様が社交事例の挨拶を返す。
これだけで、母様との関係が伺えそうだ。
「相変わらず、お美しいですな。近衛師団をお止めになってから一段と美しくなられたかな? やはり女性は男勝りに剣で勝負するより、美しさを競った方が宜しいですな。 ハッハッハッハ!」
「そうですわね。私が引退したお陰で、頭角を現した方もおられるようで、若い方であれば喜ばしい限りなのですけどね。ホッホッホッホ!」
つまり、母様が軍事に関するところから引退したおかげで、今までうだつが上がらなかった年寄りがのし上がって来たと。
二人を見ると母様は平然としているけど、ボルトール侯爵様は、歯を食いしばって我慢しているようだ。
「そうそう、
丁寧に母様がお辞儀をして祝辞をのべるが、ボルトール侯爵様のこめかみには青筋が浮き出てピクピクとひくついていた。
母様に言葉で勝つことはないですよ。かといって、剣術でも勝つことは無いと思いますけどね。
「ま、まあ、今日はお互い子供の晴れ姿ですからな、世間話もこの辺で、
話を無理やり変えたな。
「カルロ、こちらに来なさい。」
「はい、パパ。」
ボルトール候に手招きされて、姿を現したのは、僕と同じ10才とは思えない程、体格の良い少年だった。
銀髪に釣り上がった眉と切れ長の目から、かなり好戦的なイメージに見えるが、人を外見で判断するのは良くないので一度イメージをリセットする。
「始めまして。私は、ボルトール侯爵家、長男のカルロと申します。以後お見知り置き下さい。」
丁寧に頭を下げ、最初の印象より物腰の柔らかさそうな対応に少し感心した。
へー結構ちゃんとした感じだね。
「あら、これは大変ご丁寧なご挨拶で恐縮いたしますわ。私がシスティーヌ・ブロスフォードよ。レンいらっしゃい。」
母様、僕の事を手招きする。
僕は、母様の前に出て丁寧にお辞儀を返す。
「お初にお目にかかります。レンティエンス・ブロスフォードでございます。閣下にはいつも母がお世話になりお礼申し上げます。カルロ様にもこれから同年代の仲としてご相談させて頂くことがあると思いますので以後よろしくお願い申し上げます。」
僕の挨拶に少し眉をつりあげるボルトール候。
それに対してにこやかな表情で僕の事を見つめてくる、カルロ君。
う~ん案外、この子とは友達になれそうな気がしてきたぞ。
「始めまして、レンティエンスさん。君の様な可愛らしい子と知り合いになれてとても光栄だよ。」
ん?
「それにしても、剣術や戦闘術にだけは王国随一のブロスフォード家にこんな知的そうな女の子がいるとは初耳でした。」
ん、ん?
「どうですか、レンティエンスさん、僕の婚約者候補の一人になりませんか? そうだ! 僕の家で直ぐにでも暮らせば良い。そうすれば今よりもっと良い環境でレディーとして、僕のお嫁さんの一人として教育をさせてあげるよ! そうすれば脳筋的な思考しか出来ないような貴族でなく、教養ある貴婦人になれるよ。それにブロスフォード家とボルトール家も遠戚となるから、王国の軍事を全て把握でき最強の軍隊を作る事も可能だよ。そうしよう! 父上!宜しいですよね? 」
「おお! さすがは我が息子だ! 先見の明がある! お前の様な素晴らしい息子を持てて、わしは嬉しいぞ! 早速手配をし王にも承諾を頂くこととしよう!」
「「ワッハッハッハッハ!!」」
似たもの親子が高笑いしているよ。
前言撤回です。
こんな馬鹿息子の嫁に行くなんて、もし僕が本当に女の子だったら虫酸が走ってのたうち回って蹴り飛ばしているとこだよ。
カーナとリーシェンなんか、鳥肌たててながらも僕の前に立って、庇い始めたから相当危険な奴と判定したのだろう。
「カルロ様、大変申し訳ありませんが、私あなたの妻になる事はできません。」
「は、は! 何を言っておられるのかな? ボルトール侯爵家の嫡子である私が言っているのですよ? それにほら、僕って格好良いじゃないか。今なら君が第一婦人になれるのだよ? 今断ってしまうと次から次から他の女の子が婚約者となってしまい、その時点でやっぱりカルロ様が良かった! とか言って結婚してくれと言っても第何婦人になるか判らないよ? それでも断るのかな?」
べらべらと良くしゃべる男だな。
うわっ! 僕も鳥肌が全身に出てきたじゃないか!
母様なんか、笑顔のままこめかみに青筋たてている。相当怒ってそうだぞ。
それに、カーナとリーシェンが今にも刀に手を掛けそうになっている。
相当な殺気をこの馬鹿親子に向けている。
「どうですかな?システィーヌ殿。 良い話だと思いますがな?」
この二人、母様とカーナ、リーシェンの殺気が気付かないのか?
こんなんで良く軍事をまとめる将軍職についたもんだな? この国の軍事基盤って大丈夫なのか?
しかしこのままでは、埒が明かないので、僕は真実を言う事にした。
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