転生 2

「それじゃあ、まずアンケートに答えてね」

「アンケートですか?」


管理神様は、どこから出したのか、回覧版でよく使うボードに一枚の紙を挟んであるものを出してきた。

何か色々書いてあるようだけど、本当にアンケートするのか?


「では、始めるね。最初は、次の世界は科学世界が良いですか?それとも魔法世界が良いですか?」

「えー! そこからですか?」

「そうよ。これであなたに合った世界を探して、そこで転生してもらう事になるんだからね」

「わ、分かりました。では、魔法世界でお願いします」


うん、あまり漫画やネット小説なんか読んではなかったけど、子供の頃は魔法使いに憧れていた時もあったからな。

できるならそんな世界に行ってみたいし。


「では、次ね。あなたは、頭脳派、体力派、?」

「えーと?そうですね?」

「あ、ごめんね、本当に時間が無いのよ。労働改善は後程だから今はこなさないとね」

「は、はい!頑張ります! えっと、両方なんて駄目ですよね」

「はい、両方ね。はい、次ね」


え?良いのか?それで。


「チート的能力なり、反則級の技とかその他にも色々の力を、生まれた時から持っていたいですか?」

「あ、それは別にいりません。そういうの特殊な才能なんか持っていると、大抵厄介事に巻き込まれるんでしょ? ただ、簡単には死にたくないから、身体能力は高めでお願いしたいのですが」

「うん、良いよ。じゃあ、高くしといてと、お願いしとくね」

「え?お願いって?」

「ああ、このアンケートを基に来世世界の管理神に、生まれた時に与える加護の能力に反映してもらうんだよ」

「なるほどですね」

「じゃあ次ね、容姿はどうしたい? 1・綺麗、2・普通、3・ぶさいく、さあどれ?」


さあ、どれ? と言われてもなあ、なんか大雑把だな。

でも3はさすがにないよね。


「3の、ぶさいくは、ないですね」


「なるほど、じゃあ1ね」


「え?べ、別に綺麗でなくても・・」

「あーごめん一度書いたら修正、出来ないのよ」


それは、最初に言っておいて下さい!


「じゃあ次、生まれる家の経済状況ね。普通、貧乏、どっち?」


あ、金持ちとかは、ないんだ。その方が気が楽でいいや。


「じゃあ普通で」

「オッケー、普通に貴族ね」

「え?ちょ、ちょっと神様! 貴族ってなんですか?」

「え?知らないの? 貴族だよ、平民を守り、国に貢献する地位の人の事だよ?」


平然と当たり前の様に言う神様。


「いえ、その、何で普通って答えたのに貴族なんですか?」

「だって、私にとっては普通は貴族だもん!」

「なんなんですか!急に可愛い子ぶって! あー!今アンケートに普通って後ろに貴族って書き足して丸したでしょ!」


ボードで見えないようにして、何かゴソゴソ書いていると思ったら、アンケート内容改ざんしているんじゃないか?


「えーと、僕はちょっと身体能力が良いだけで、他は普通で良いですから書き直して下さい。」


僕は神様にアンケートの修正をお願いするが、神様は頭をかいて微笑んでいた。


「そのーごめんね。さっきも言ったけど一度書いたら直せないんだ、これ」

「えーーーー! なんでそんな事するんですか!」

「だって! 私に優しくしてくれたからお礼にと思って奮発してあげようかなって思っただけなのに・・・怒るなんて・・・」


何故か俯いて肩を落とし、ショボンとしてしまったよ。


「あーもう分かりましたから、そんなに凹まないでくださいよ」

「えへへへ、これも神の愛情だからね」


僕が了承の言葉を言った途端、満面の笑顔をふりまく神様。演技だったのか?神様も女の子は怖いと身をもって知りました。いや魂をもってか?


ブーブー、ブーブー


何処から聞こえるのか急に大きな音のブザー音が辺りに鳴り響いた。


「なんのブザーですか?」

「ああ! もう時間がないみたいだね!」

「ええ? そうなんですか?」

「うん、ごめんね!」


そう神様が言ったと思ったら、僕の意識が遠退いて、上空に吸い上げられる感じがした。


「アンケートは全部できなかったけど、後は私が上手く書いておくからね。なるべく要望以上にしてもらえるよう頼んどくよ! それと、愚痴聞いてもらってありがとうね! あなたみたいに神様に対応してくれる人は初めてだったよ。あっちの神様にも、神の対応がとっても良い子だって言っとくからね!」

「あのー、程々にしてくださいよ」

「大丈夫!任せといて!」


物凄く不安だ。

まあ、突っ込み所は多々あるけど、神様も僕に良くしてくれようとした事だけは分かるから良しとしますか。

アンケート調査も終わって、いよいよ異世界へデビューだ!


「色々ありがとうございました。別の世界で一生懸命生きてみます!」

「うん!頑張るんだよ!」

「あーーーー一つ忘れていた!」


僕の意識がだいぶ薄れて来ているのに何かまだあるんですか?


「最後に、転生する身体は男の子、女の子どっち?!」


「えー!!そんなのどっちでもいいですよ!」

「わかった!!じゃあどっちもだね!」

「え?」

「じゃあ!頑張って!!」


「え? えええええ???????」

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