コンビニでタイムリープ始めました。

恋するメンチカツ

〜プロローグ〜

 建て付けの悪い玄関のドアを雑に閉めると、コンビニへと向かう。コンビニへ向かうといっても買い物に行く訳では無く、アルバイトをする為だ。


 コンビニの深夜アルバイトを始めて、かれこれ8年の月日が経つ。当初は大学生活の一部でしか無かったアルバイトだが大学を卒業してからは、フリーターとして生活の大部分を占める様になった。


 コンビニまでは一人暮らしをするアパートから徒歩10分。距離にすると約1km。これが僕にとって日常での行動範囲だ。

 

 アパートの階段を降りるとゴミステーションにゴミが溜まっていた。部屋のベランダに溜まっているゴミ袋を思い出し、足を止めるが「今度でいっか」と再び歩き出す。


 この時の僕はコンビニと家との往復、繰り返される日常の中で曜日感覚さえ分からなくなっていた。まるで毎日繰り返されるに違和感を無くすかの様に。


 


 それは、


 録画したビデオテープを何度も再生している様な……。


 円形に敷かれたレールの上を永遠に走っている様な……。


 予知夢とは全く違う圧倒的な既視感。


 そしてそれは、不確かでありながらも確かな違和感だった。


 もし、人生に分岐点があるとして何度でもその分岐点へ戻れるとしよう。しかしきっとその分岐点には正解の選択なんて存在しないのだ。あちらを立てればこちらが立たず。それでも、人は探さずにはいられないのだろう……より良い不正解を……。


 これは、とある1日をループし続けるコンビニ店員である僕と彼女の物語だ。

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