第20話 魔法は万能ではなかったです。
「さて、そろそろ出発しようか?」
朝食を終えた二人は、紅茶を飲んで一休みしていた。朝食は昨日の残り物だったけども、温めなおされたスープやパンはとても美味しかった。
「腹いっぱいになったし、出発するのはいいけど。どうするんだ。外は雨だぜ。まあ、俺様も魔法の才能があるからな。水魔法と風魔法は使えるようになったが、雨の日はどうしたら良いんだ?」
「君は何を言っている?」
「ん?魔法で雨を防ぐんじゃないのか?」
「いやいや、そんなわけないだろう。これを使うといい」
エレンがそういって指輪に願うと、灰色のフードつきコートが彼女の腕の中に現われた。
「って、そこは普通かよ」
「何を言ってるんだ?」
「いや、昨日から散々、魔法のすごさを見せてきたんだから、ここも魔法だって思うだろ?」
「無茶を言うな。この家みたいに、雨をしのぐ方法はいくらでもあるが、そんな魔法を展開しながら歩くなんて真似できるわけないだろう」
「そうかもしれないけど…こう、あるだろ!!」
「しらん。まあ、いいからコートを羽織ったら外に出てくれ。この家を解体する」
「言いたいことはまだあるけど…まあ、いいか」
リュウは言われるがまま、コートを着て外に出る。雨がざあざあと降っていた。雨を大いに含んだ地面はぬかるんでいて、汚らしかった。目を落とし、自分の足元を確認する。魔王城を出た後に、裸足ではあんまりということで、エレンに用意してもらった靴もどき、というよりも革を巻いて革紐で足首を閉じただけの代物である。地面のデコボコからの痛みは守られているけども、地面のぐにゅぐにゅ感が非常に気持ちが悪い。
(まあ、ただの革を巻いているだけだからなぁ。まともな靴が欲しい)
彼が考え事をしていると、遅れてエレンが姿を現した。おそらくベッドやその他を片付けてきたのだろう。彼女は白い雨よけのコートに身を包んでいた。彼女は外に出てくると、地面に掌を置き力を行使する。
昨日初めて魔法を使えるようになったリュウだが、使えるようになると自然とエレンの使う魔法も見えてきた。リュウが体内で感じ取るマナとは比較にならないほど膨大な量のマナが彼女手を通して、土のドームハウスに流れているのが分かった。
(桁が違う)
文字通りステータスにして二桁の差があるのだが、それが肌身にしみて理解ができた。彼女の片づけがすみ、街道沿いの道に戻る。今日中にどこかの町か村に入れるのだろうか?
(もっとも、魔族の村で安心して眠れるかどうかは分からないが)
「なあ、レベルが上がってステータスが上がったのは分かるんだが、あんまり実感がないんだよな。俺、強くなっているんだよな」
「なってるだろ。特に初期の頃の方が実感しやすいと思うが」
「そうなのか?いや、確かに魔法の威力は上がったっぽいんだよ」
今朝のウォシュレットの悲劇を思い出して苦笑いを浮かべる。
「そうだな。正確な指針ではないが、筋力が1つ上がれば、1キロ重たいものを持てるようになると考えても良いかもしれない」
「ほうほう、分かりやすいな。ってことは、筋力6000位あるエレンは、つまり6トンのものを持てると?」
「そんなわけあるか!!大体、正確な指針ではないって言ったでしょ。初期の頃はそういうものだと思ってくれたら良いから。魔力にしても同じ。魔力が1で1キロ程度の物体の操作が可能になると思えばいい」
(なるほど。意外に分かりやすい。昨日作っていたドームハウスの総重量を思えば、それなりの魔力があるからこそ出来るということか。6トンではないにしても十分化け物だけどな!!)
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