第13話 朝の連続テレビドラマってはまるよね
瞬殺でした。
魔物が現れたと、リュウが認識した次の瞬間には魔物の首が胴体と永遠の別れをした後だった。何が起きたのか、ステータスの低いリュウには全く分からなかった。唯一理解できたのは、魔物が倒されたという事実のみ。
「ついてるな。こいつは中々美味いぞ」
「…は?まさか、これを食うのか」
倒された魔物は巨大な鶏だ。体高は2m近く羽は黒い。筋肉で引き締まった体は一般的なホワイトレグホンではなく軍鶏といったところ。
「なんだ?君の世界では鶏肉は食べないのか?」
「食べるけど、これって魔物じゃないのか?」
「それがどうした?」
怪訝な顔で答えるエレンに大きくため息をはいた。そもそも、根本的に常識がかみ合わない。まあ、無駄にでかいが見た目は軍鶏だ。食えなくはないだろう。血が紫っていうのは、食欲が激しく減退するけども。
「いや、まあ。いいや。とりあえず指輪に収納か?」
「それでもいいが、下処理だけは済ませておこう。手早く済ませないと味が落ちるからな」
「指輪の中でも劣化するのか。あのパンはできたてって感じだったけど」
「しないが、気分的なものだ」
そういいながら、巨大な軍鶏を手早く処理していく。頭はすでに落としてあるので、さかさまにして血抜きする。美人のエレンが軍鶏の脚を持って逆さづりというどう見てもスプラッタ映画のような光景。きれいな切断面の首から紫色の血が滴り落ちて、血だまり出来ていく。
リュウは気持ちの悪い光景から視線をそらせて森の方に目を向ける。さっきのような化け物がいるとは思えないほどに穏やかな雰囲気である。景色をみて心和ませるような趣味はないので、リュウは暇つぶしにリモコンを操作する。この辺は引きこもりの特性だろう。やることはないからとりあえずテレビをつける。
そういう感覚で電源を入れるも、少し前に確認したばかり見るべきものはない。そんなわけで、リュウは3チャンネルを選択する。止まったときの中でなければ、テレビもしっかり動いている。異世界にいながら、元の世界のテレビが見れるというのも不思議な気がするが、流れてきたのは『朝の連続テレビドラマ』である。毎日15分だけ放送するテレビドラマで、いままで見たことは一度もなかった。
(でも、他は映らないからな。昨日の最後のテレビが3時過ぎ、いまが8時ということは5時間くらい経過したということか)
特に興味はないので、オープニングを流し見る。
今回で43話とかなり進んでいるけども、見ているとおおよそのストーリーは頭に入ってくる。
(っていうか、意外と面白いな。バカ、ミチル。そこはタケトを追いかけろよ。ちゃんと話しないと伝わらないだろ。ああ、もう。ってここで終わるのか。おいおい、何気に続きが気になるじゃないか?)
「おい!」
肩を揺さぶられてハッと我に帰る。モニターの電源を落とすと、目の前にエレンの顔があった。
(うわー、ちょー美人)
「君はさっきから何をしているんだ。ぼーっと空中を見ながらぶつぶつ呟いていて、大丈夫か?」
「あ、ああ。ごめん。ちょっと、考え事をしていた」
(テレビを見るのも考え物か?だが、この世界唯一の娯楽だからな。どうせなら民放も映してくれよ。ちゃんと受信料払っていたんだからさ。…親がだけど)
「解体は終わったぞ。先に進もう」
「なあ。日が暮れてきているが、町か村は見つかりそうか?」
「私に分かるわけないだろう。そもそも、街があるといったのは君の方じゃないか?」
「そっか。じゃあ、せめて洞窟とか屋根のあるところを探した方が良いかもしれない。明日は雨が降る」
「何?君は未来が分かるのか?」
魔物の出現にも眉一つ動かさないエレンが驚愕に目を見開いた。
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