ユウガな軍神
聖女の声量はさらに増し、まるで世界が歌っているように歌が響き渡る。
イノリアは空へ向けた両手を再び十字架のように広げると、ヒゲクジラの巨獣ユウガが右腕をゆっくり持ち上げる。
その熊かトカゲのような腕に
大量の煙は次第に綿アメが棒に絡め取られるように、つむじを巻き五本の鎌に見える手に吸い込まれていく。
この街獣の腕にだけ竜巻が起きたかのようだった。
持ち上げた街獣ユウガの右腕が、煙と合わせて大気を吸引してるのだと解った。
落雷が落ちたのかと思えるほどの轟音の後、急激に右腕が膨らみ、半分に切ったヒイラギを模した刀状のヒレへと戻った。
街獣ユウガは弓を引くように肘を引いて、矢のごとく勢いを付けて刀状のヒレを怪物の脇腹へ突き刺す。
岩と鉄がけたましく擦れる音と共に、悪魔の怪物は断末魔のように吠えた。
当然だ。
島のようにでかい剣先が深く突き刺さっている。
山ほどの巨体を持つ悪魔だって痛がるはずさ。
スゴい――――本当に凄すぎる。
街獣ユウガが刺したヒレ引き抜くと刺された敵街獣の脇腹から、紫の血液が滝のように放流され、溶岩の大地に降り注ぎ白い
圧倒的な強さに恐れ
プルーム
お、終わったのか?
これで
異様な光景はなお続く。
立ち尽くす俺の後ろで雑多な物音がしたので今度は何かと振り向く。
避難民である老人達は皆、石畳に手と膝を付き頭を地に伏せて礼拝していた。
他の若い避難民はその光景に戸惑い立ち尽くす。
平原のように揃った礼拝は俺に変な勘違いさせそうになるが、バカな俺でも何に対して頭を下げたか解る。
泣いたかと思えばコケシのように茫然と眺めていた赤子は、すっかり上機嫌になり街獣ユウガに触ろうとする素振りで、小さな手で宙を引っ掻く。
再び視線をヒゲクジラの巨獣へ向けると、曇天の穴から降り注ぐ黄金の空に照らされる、街獣の姿に魅入った。
始まりは、なんてことない日常だった。
なのに今は燎原の火の如く、景色は灰になっていく。
俺達は騙されていた。
大人たちに、この街に、世界に――――。
"それ"を目の当たりにするまで、自分は何でもできる。
不可能なんて何もない、無敵だと信じていた。
でも、それが巨大すぎることで、自分の存在がちっぽけで弱い存在だと痛感した。
恐怖だけに支配されたかと感じたが、何故だが同時に崇め奉り、ひれ伏したいという感情が見栄える。
後で仲間が言っていたが、これを
恐怖すると同時に尊敬したい。
訳がわからない不思議な感情。
世界に神が存在するなら今日、初めて神と遭遇した。
俺達はこの街で生きていた訳じゃない。
街獣の体温から地熱発電でエネルギーを生成し、街獣の表皮から資源を得て建物や家を作り、街獣の生命力で作物を育て食うことで生かされていた。
この街、ユウガ・エスニシティの真の姿だった。
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続きは執筆中ですm(__)m
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