ユウガな軍神 街獣総力戦
にのい・しち
優雅な軍神
俺達は騙されていた。
大人共に、この街に、世界に――――。
火の点いた街は
立ち上る煙が空を黒く塗りつぶし、日の光を遮られた暗がりで焼かれた木の葉は、熱風に飛ばされホタルの光のように宙を漂った。
木造の民家は猛炎に焼かれ、石造りの建物は崩れ落ち、地面は雷が走ったようにひび割れる。
風に乗って悲鳴が四方八方から聞こえた。
もうこれ以上、最悪なことは起きないでくれと願うが、そんな願いに神は答えてくれない。
俺の目の前には聖女の後ろ姿が見えていた。
その聖女は遠くの山を見上げ、何かを訴えかけるように歌を奏でている。
神社の入り口である鳥居の先に見える山。
彼女が見つめる不気味な影のかかった山は、頂上が斑の雲を貫くほど高く、その形は釜の首のように折れ曲がり顎は船底のように膨らんでいた。
お
雲の先を眺めると霞がかったクジラの鼻先に、鳥が停まったように二枚の羽根が広がっていて、黄金の空を指すように立ち上がっている。
いや、それは羽に見える大きなヒゲだ。
釜首の下はなだらかな坂になり、坂は直角に曲がって平坦な岬が続いた。
それは視界を埋め尽くすほどの巨大な腕。
手にはトカゲのように鋭い爪を持った、大きな五本の指が生える。
巨体の肌は逆光で影になり、闇が世界を閉ざすカーテンのように思えた。
まともに光が当たる部分は青く反射しており本来の色彩を露呈させ、部分的に見える白や灰色、クリーム色をした列島のような模様が続いている。
これは何か傷痕なのか?
自分が知る限りでこの形に類似するのは、迷彩柄が近しい。
"ソレ"を目の当たりにするまで自分は何でもできる、不可能なんて何もない、無敵だと信じていた。
でも、それが巨大すぎることで自分の存在が、ちっぽけで弱い存在だと痛感させられる。
恐怖だけに支配されたかと感じたが、何故だが同時に崇め奉り、ひれ伏したいという感情が見栄えた。
後で仲間が言っていたが、これを
恐怖すると同時に尊敬したい。
訳がわからない不思議な感情。
世界に神が存在するなら、今日、初めて神と遭遇した。
俺達はこの街で生きていた訳じゃない。
――――生かされていた。
この街、【ユウガ・エスニシティ】の真の姿だった。
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