第三話:ランクとレイド
「《ツール》」
さっきと同じように、目の前にホログラムウィンドウが表示される。
これ大声で言うの恥ずかしいな……
そう思いつつ、ぎこちないながらに操作し、理玖に電話をかけた。
プルルルル……
「もしもし! もうログインとか全部終わった? 今、大翔どこおるん?」
こいつ電話出るの早い……!
1コールだぞ? こっちが驚くわ!
「あー、もしもし。今なんか広場の多分ど真ん中にいるわ。」
「おっけ! 今すぐ向かうわ!」
「おー、了解!」
と言って、電話を切った。
手を耳に当てずに電話できるなんて便利だな……
近未来という感じがしてワクワクする。
「理玖を待ってる間はベンチにでも座ってツールでもいじるか」
そう呟いた直後、
「あたしメリーさん。今あなたの後ろにいるの」
「うわ! びっくりした! マジで心臓に悪いわ!」
振り向くと、そこには意地が悪そうな笑みを浮かべて立つ、高身長イケメンが……
「誰……?」
「理玖やわ!」
「自分のイケメンになりたいっていう浅はかな考えがAIに読まれたか? そんなに強くイケメンに憧れてた?」
「大翔にだけは言われたくないけどな! お前も大概イケメンになったな!」
あ、俺そういえばアバターイケメンにしてもらったんだった。
このままだと特大ブーメランが刺さる……
やらかした、どうやってごまかそう……
「ま、まあ、それはおいといて。 あ、メリーさんは徐々に近づいてこないとメリーさんじゃないから、ちゃんとメリーさんに謝っとけ。お前、メリーさん界隈の面汚しやぞ」
うん。
我ながら完璧な誤魔化し方。
「露骨に話題そらされた上に、ダメ出し!? 大翔いつからメリーさん界隈に厳しなってん!? 意味わからんって!」
「お前メリーさんに迷惑かけたら、人生の呪いルート突入するからな。メリーさんにだけは手出したらダメだって地元では言われてたぞ」
「それ幼少期絶対メリーさんに怯えて暮らしてるやん! メリーさんに対する意識が高い町で生まれ育っちゃってるやん!」
メリーさんに対する意識が高い町って何だよ!
思わず吹きそうになるのをこらえる。
……適当に流すか。
「……まあ、それはさておき、この二つの建物って何なんだ?」
「さておかせへんで? 随分イケメンになったんやなぁ、大翔ぉ? だいぶ《いめちぇん》したんやなぁ。最近彼女とかできたんかぁ?」
「その《高校デビューした後、夏に帰省した時に会った親戚に高校デビューがばれて、最近の女事情を問い詰められたときに、嬉々として問い詰めてくる巨乳のお姉さん》みたいな口調で言ってくるな!!」
「大翔やっぱりツッコミうまいな! さすがイケメン! でも前よりはツッコミの切れ味悪いなぁ」
「もう恥ずか死ぬからやめてくれ」
マジで、俺、死んじゃう。
アバターだしイケメンがいいなとか思った過去の俺ぶっ飛ばす……!
「しゃーないからさっきの話戻るんやけど、あのおっきい建物は、右がランクで左がレイド」
「切り替え早いな……」
「切り替えんとこか?」
「いやいや! 切り替えてください! まじで助かります、先輩!」
「まあ、さっきの話に戻るんやけど、右がランクで左がレイド。ランクとレイドってはじめ説明無かったやんな?」
「うん、無かった」
首を左右に振る。
「じゃあ説明するけど、ランクっていうのはその名の通り各個人のランクをつけるところ。ランクは上からダイヤモンド、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズっていう五種類があるねん。はじめはブロンズからスタートで、勝ったら《RP》っていうランクポイントがたまって負けたら失うって感じやな。ランクのシステム的なことはこんな感じやな! あとはやってからのお楽しみや!」
「教えてほしい感あるけどそれはそれで楽しみ! でもまぁ、ランクの仕様は割とほかのゲームと似てるな。レイドはどうなんだ?」
「そう! ここからがこのゲームのおもろいとこ! ランクは6vs6のサーチアンドデストロイだけなんやけど、レイドは何でもしたいことできるねん!」
「チームデスマッチとかってことか?」
「それはちょっとちゃうねん! レイドはな、8種類くらいの広ーーいマップがあって、マップによって違ったりするねんけど、大体は学校とか工場、町があってその中に沸く武器とか高価なアイテムとかを漁って帰るもよし。町から出てくるプレイヤーを狙って倒し、町でそいつが集めたアイテムを根こそぎ剥ぎ取るも良し、同時にマップに存在できる人数が60人だから思ってるより敵と出会うで!」
「結構、えげつないな……」
初心者が狙って狩られて萎え落ちする未来が見える。
「レイド行くときはホンマは装備とか自分で武器屋とかで武器を買って整えて、死んだら全ロスするねんけど、初心者救済でレベルが10行くまではある程度の武器なら無料で買えるし死んでもロストしやんからそこらへんは安心できるで!」
「そのシステム作った運営、神だな」
「まじで、このゲーム神やから! まあやってみやんことにはわからんやろうし、いっかいレイドでもやってみる? めっちゃリアルでたぶんびっくりするで!」
「おし……行くか……!」
二人は左の建物に向けて歩き出す。
「武器とかはレイドのビルの中で買えるで」
「お! ワクワクしてきた! どんな銃使おうかな~!」
「ワクワクしすぎて、大翔のキャラちょっと変わってるって!」
ワクワクが止まらない……!!!
「うおおおおおおおおおおお!!!」
「恥ずかしいからそんなにはしゃがんといて! 待ってや!」
二人はビルの中に走りこんだ。
広場の周りの人たちは微笑ましいものを見るような目で二人を見ていたという……
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