第46章 12月17日
第1話 俺と後輩の二次会
太陽は沈み、月明かりと街灯だけが辺りを照らす。
深夜というにはまだ早く、どちらかといえば、夜のはじまりというほうが近い、そんな時間に。
俺、雪城雄黄は、ゼミの忘年会という名の飲み会からの帰路へと着いていた。
冷え込んだ夜の空気は冷たく、吐いた息は白く染まっている。
騒がしかった繁華街から遠のいていくにつれて、少しずつ、周囲の明かりが減っていく。
そんな道をひとり寂しく──ではなく。
ひとりの美少女と手を繋ぎながら、ゆっくりと歩いていた。
外で酒を飲んだあと、ひとり夜空を見上げながら帰るのも悪くないのだが、こうして手のひらに温もりを感じながら帰るのも、これまた悪くない。
「二次会、行かなくてよかったのか?」
そう問いかけた俺に、隣の美少女──雨空蒼衣は、肩ほどまでの茶色がかった髪を揺らしながら、
「はい。先輩が行くなら着いていこうかと思ってましたけど……。先輩こそ、行かなくてよかったんですか?」
「……俺も、蒼衣が行くなら着いていこうかと思ってたんだよなあ」
「わたしたち、相思相愛ですね」
くすり、と楽しそうに笑う蒼衣が、小悪魔のような表情で俺の方をちらり、と見る。
アルコールのせいか、いつもより色っぽく見える彼女に、どきり、とさせられながら、俺はひとつ、咳払いをする。
「……そうじゃなかったら、付き合ってないだろ」
「! ……ふふっ、そうですね!」
がばり、と飛びつくように腕を抱き締めてくる上に、頭をぐりぐりと押し付けてくる。
……コートの上からとはいえ、こう、ちょっと柔らかいな……。
もうちょっと感触がわかるように、強めに抱き締めてくれないだろうか、と考えたところで、軽く頭を振って、思考を切り替える。
普段より煩悩が強いのはアルコールのせいだな。間違いない。酒が悪い。
責任をアルコールに押し付けながら、コート越しに蒼衣の温もりと柔らかさ、そして甘い香りを堪能しつつ、ゆっくりとアパートまでの道を歩いていく。
「……とはいえ、このまま帰るのはちょっと味気ないよな」
「まあ、時間も早いですからね。帰りにコンビニでも寄って、先輩の家で飲み直します?」
「いや、せっかく外に出てるからな」
そう言って、俺は蒼衣が抱きつく腕と逆の腕を伸ばして、視線の先にあった店を指差した。
「──ふたりで、二次会でもするか」
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