第8話 お祭り暴走ガール
昨年と同じように、一度会場を通り過ぎた俺たちは、その突き当たりにある広場にたどり着いていた。真ん中には神輿が置かれており、その周囲に人だかりが出来ている。やっぱり神輿、でかいな。
「さて、何買うか決めたか?」
「はい。まずたこ焼きと焼きそばとお好み焼き。これは外せません。それにりんご飴とかき氷、わたあめ、チョコバナナですね。ここまでは定番です。あとはやっぱりベビーカステラとイカ焼きと焼き鳥とオムそばとえびせんと焼きとうもろこしと──」
「よーしわかった。覚えきれないから買うやつがあったら腕を引っ張ってくれ。あと食い切れる量にしろよ?」
「大丈夫ですよ。わたしがお腹いっぱいでも先輩が食べてくれます」
「俺が食うの前提なのか……」
ぐっ、と胸の前で手を握る蒼衣。昨年もこんな感じだった気がするな……。というか、先輩別に大食いじゃないからな? そんなにいっぱい食えないぞ? ……まあ、蒼衣が楽しそうだからいいことにしておくか。
「さあ先輩、行きましょう!」
「わかったから落ち着け」
ぐい、と腕を引かれ、俺は苦笑しながら歩きはじめる。ぴょこんぴょこんと跳ねる髪はまるで尻尾のようで、蒼衣のテンションの高さがよくわかる。
「まずはたこ焼きですよ!」
そう言う蒼衣に引きずられるように、近くにあったたこ焼き屋へと向かう。さらに、隣にあった焼きそばの屋台で焼きそばを購入。蒼衣はなぜか2人前を頼んでいた。なんで?
「蒼衣さん蒼衣さん、あの量を買おうとしてるのになぜ焼きそば2人前……?」
「え? 焼きそば、先輩も食べますよね?」
当然、とばかりに首を傾げる蒼衣。
「いや、食べるが……。たこ焼きは1人前だっただろ?」
そう、たこ焼きは1人前だったのだ。なぜ焼きそばだけ2人前だったのか、謎である。
じと、と視線を向けると、蒼衣はてへ、と笑いながら答える。
「だってたこ焼きはあーんが出来るじゃないですか。2人前にしたら、先輩させてくれなさそうですし」
「そこ基準なのか……」
「そこ基準です。あとで期待しておいてくださいね?」
蒼衣はウインクをひとつ。
1人前でもさせないけどな。……まあ、多分、押し切られるが。
満更でもない、と思っている自分から目を逸らしつつ、蒼衣を眺めていると、きらりーん、と彼女の瞳が輝く。……嫌な予感がする。
「あっ! 先輩! たい焼きの屋台があります! 見落としてましたね……行きましょう!」
「まだ増やすのか!?」
「だってたい焼きですよ! 近くにお店、ないじゃないですか! 焼きたてを食べるチャンスです!」
「まあ、たしかに……?」
言われてみればそうだな……。
なんて、油断していると。
「あんこだけじゃなくてカスタードクリームとかチョコとか、ほかにもあるみたいですね。全種類制覇しましょう!」
「1個じゃねえの!?」
これ、多分明日の昼飯は残りものだな……。
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