第12話 落雷注意

全員の残機が1ずつ減り、仕切り直しとなった戦いは、またも乱戦へと持ち込まれる。空からは雷が、右からは炎の球が、左からは吸い込まれるという、絶望的な状況を、俺の操作するキツネは高速移動で脱する。


しゅうぃん、と音が鳴り、キツネの体が青く発光、残像を残して雨空の操作するピンクボールより向こう側へ。赤帽がキツネへと投げた炎の球が、ピンクボールへと直撃する。


「あいたっ!」


「お前は痛くないだろ……」


「ゲームで操作しているキャラが攻撃されるとつい言っちゃいません?」


「俺は言わないな」


声は出るけど、痛いとかは言わない気がする。……もしかしたら言っているのかもしれないが。


そんなことを考えているうちにも、戦況は刻々と変化していく。雨空の操作するピンクボールが赤帽を吸収し、能力を奪って炎の球を投げはじめ、電気ネズミは相変わらず雷を落としまくっている。あいつの頭上、危険すぎるな……。


俺は、ひとまず距離を取り、遠距離攻撃で応戦しようとするものの、それを赤帽が逃さないというように追いかけてくる。


炎の球を投げつける赤帽に、銃で応戦していると、そこに炎の球がもうひとつ、そして雷の球まで加わった。


ピンクボールと電気ネズミが参戦、またも乱闘がはじまる。


「お前らの球規則性がなさすぎる!」


「直線しか飛ばない先輩のキツネとは違うんですよ!」


炎と雷の球は、それぞれ速度や跳ね方が違い、微妙にかわしにくい。それに対し、キツネの銃の攻撃は、速度はあるものの直線にしか飛ばないのだ。


ときに炎の球に当たり、ときに雷に打たれながら、俺は銃を撃ち続ける。


「くそ……っ」


しかし、俺はステージの端へと追いやられ、ギリギリの状況だ。


高速移動をしつつ、ステージの内側へ戻ろうとするものの、うまく戻ることが出来ない。


「先輩、これは今回はわたしの勝ちですね……!」


「うお!?」


拾ったアイテムを投げつけてくる雨空の攻撃を回避しつつ、上空へ脱出。そして──


「それで勝てると思うなよ!」


下方向への攻撃が炸裂──


する直前、落雷がキツネとピンクボールを襲い、画面外へと吹き飛ばした。


画面の中央に、してやったりと佇んでいるのは──


「「電気ネズミぃぃぃぃ!!!」」


キツネ、ピンクボール、残機1。赤帽、電気ネズミ残機2。

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