第16章 11月25日

第1話 平日の休みは良いものだ

世間の人々は、今日は普通に学校があったり、仕事のあったりする平日だ。


しかし、俺たち──正確には、俺の所属する大学の学生と教授だけは、今日は休みである。


理由は単純、創立記念日だ。


その日を記念して、なにをしているのかはまったくもってわからないが、兎にも角にも休みになる。貰える休みはありがたく貰っておくべきだろう。


そんなわけで、今日はめでたく休みであり、大学に行く必要はないのだが、俺と雨空は大学のキャンパスへと向かっていた。


「大学の学祭、どんなものなのか楽しみです……!」


「学祭って、高校のイメージのせいであんまり派手な感じがしないんだが」


「わかります。都会はどうなのか知りませんけど、田舎の学校は地域の夏祭りにも劣りますよね」


「そうなんだよなあ」


数件の出店があるだけの、いわばおままごとのようなものだ。こんなことを言ったら怒られるかもしれないが。


しかもほとんどが冷凍食品。そのくせ値段だけは取るのだから、まったく買う気が起こらない。


少なくとも、俺は一切買わなかった。


いつもの大学前の信号に引っかかり、足を止める。


「高校の学祭の日、俺は何もしてなかったんだが、雨空は?」


「わたしは屋台で調理しましたよ。……フランクフルトを鉄板に載せて焼いていただけですけど」


「あー……やっぱりその程度だよな」


どうやら、どこも同じような感じらしい。


「ま、そんなに期待しないで軽めに楽しもうぜ」


「そうですね。どうせ自由参加ですし」


2人で小さく苦笑して、信号が青になったことを確認してから横断歩道を渡る。


一切祭り感のない正門を通ると、何か鳴らしているのだろう。スピーカーの音が聞こえる。


音の聞こえ方が学祭というより体育祭みたいだな……。


「人、あんまりいませんね」


「まあ、学祭とはいえ休みにわざわざ大学に来るやつは少ないだろうな」


そう言いながら、キャンパス中央の広場へと向かう。


音が少しずつ大きくなるにつれ、なんとなく気分が高揚する気がした。


角を曲がり、中央の広場が見える。


そこには──

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