第6話 天井のシミを数えつつ

それからの時間は、特になにが起こるわけでもなかった。


いつも通りに、課題をしたり、雑談をしたりしながら夜まで過ごしながら、間で小腹が空けばパスタを食べる。


雨空は、


「太るので次は夕飯まで食べません」


などと言って昼食と夕食にしか食べなかった。そのせいで、ほとんどを俺が食べた。いや、本当に死にかねない。腹が爆発しそう。


最後に至っては、


「先輩! ほら、あと少しです! 頑張って!」


などという無責任な応援をされ、無理矢理腹に詰め込んだ。


よく考えてみれば、今日食べ切る必要はなかったのでは……?


人類の叡智、冷蔵庫に入れて明日食えばよかったのでは……?


などと、今更になって思っている。


ちなみに、そんな無茶をした俺は、天井のシミを数えている。


いや、比喩とかではなく、動けないから本当に数えている。


今動くの、本当に無理。


「まさか、本当に食べ切るとは思いませんでしたよ……」


数えたシミの数が分からなくなってきた頃、そんな無責任なことを言いながら、雨空が視界に顔を出してくる。おい、どのシミ数えたか分からなくなったじゃねえか……。


「お前が食えって言ったんだろ……。いや、無理って言えばよかったのはそうなんだけど」


「わたしだって無理って言われる前提で頑張れ〜って言ってたんですよ? さすがにあの量は今日だけで無理だと思ったので」


最初は本当に食べ切るつもりでしたけど、と雨空が付け加える。


食べ切るつもりだったのか。3袋は無理だって言っただろ……。いや、言ってはなかった気がする。俺が悪いのか。


「まあ、仮定はともかく、これでそうめんは無くなったわけだ……」


白い山のあった、部屋の隅を見ると、そこは久しぶりに見る床が覗いていた。


苦節2ヶ月……。


「半分はそうめん食ってたなあ」


「ですね……。わたしの料理レパートリーがそうめんばっかり増えた2ヶ月でしたよ……」


遠い目をしている雨空に、俺は頭だけを起こして言う。


「来年にも活躍するだろうから、しっかり覚えておいてくれよ」


「来年は貰ってくる量考えてくださいよ!?」


「わかってるわかってる。俺も今年みたいなことにはもうなりたくない……」


しばらく、そうめん見たくない……。


2人揃ってげんなりしながら、俺たちは食後のひととき、と言うには優雅さの足りない時間を過ごした。

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