第10話 肩に伝わる温もり

「美味かった……!」


生しらす丼を食べ、一緒に付いてきた味噌汁を飲み、それからしばらくして、俺たちは帰るべく、駅へと向かっていた。


「本当に美味しかったです……! ご馳走様でした」


ぺこり、と頭を下げる雨空。


「おう」


そう短く返事をして、俺はそのまま歩いていく。


駅はそう遠くなく、数分ほど歩くと着く距離にあった。


2人分の切符を買い、本数の減りはじめた電車へと乗り込む。


微妙な時間のおかげか、それともいつもこの状態なのかはわからないが、人はほとんど乗っていなかった。


適当に席へと並んで座り、電車へと揺られる。


心地よい振動が、眠気を誘う。


電車に乗ってから、どのくらい経ったのだろうか。


眠気のせいで、ある程度の時間乗っていた気になっているが、実際はまだ大した時間ではないのだろう。


それでも、目を開けているのが厳しくなってくる。


眠気に負けて、まぶたが落ちかけるその瞬間。


こつん、と。


何かが肩に乗る感触があった。


遅れて、ふわり、といい香りがした。


雨空が、眠気に負けたらしい。


すぅ、すぅ、と規則正しい寝息をたてながら眠っている。


穏やかな、安心しきった寝顔を見ながら、相変わらず警戒心がないやつだ、と思った。


仕方ない。


そう思い、俺は眠気を飛ばすように、目を擦った。

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