第13話 スパーク!
そんなこんなで、俺たちはアパートの外、庭、のような場所に来ていた。
まあ、庭といっても何かが植えられているわけではなく、砂が敷かれているだけなのだが。
その敷かれた砂の上に、ろうそく立てに刺されたろうそくを置く。
そして、ライターを使って火をつける。
街灯の光のせいで真っ暗、とは言えないまでも、それなりに暗かった空間に、ゆらり、ゆらりと揺れる暖かな光が灯った。
「帰省したときに押し付けられたろうそくがこんな形で役に立つとは……」
災害の時に役に立つ、なんて言われて母親に押し付けられたろうそくとその他諸々。
ありがとう母さん。花火に使わせてもらうよ。俺、避難道具にはろうそくじゃなくて発電機付きの懐中電灯を使うからろうそくはいらないよ。
そんな下らないことを考えていると、バケツに水を溜め終わった雨空が、花火の袋を開ける。
「さて、先輩。どれからいきます?」
「そうだな……。とりあえずこの派手そうなやつで」
俺が手に取ったのは、黄色と青の派手なものだ。先にはリボンのように着火点が付いており、よく見る派手そうなやつだった。
「じゃあわたしは……これで」
雨空が選んだのは赤と緑のクリスマスカラーだ。形状は俺のものと同じ、よく見る派手な花火だと思われるものだ。
……というか、なぜ夏の時期のアイテムにその配色を選んだんだ。南半球かよ。
「じゃあ、はじめましょう!」
そう言って、雨空はろうそくへと花火を近づける。
俺もそれに倣って花火をろうそくへと持っていく。
ぱちぱち、と小さな音と共に、先のリボンのような部分が燃えて揺らめく。
そして、シュッ、と鋭い音がしたと共に、シュボボボボッ、と音が変化。それに伴って鮮やかな光が空間を彩った。火薬の独特な匂いが、鼻腔を撫でる。
「おお……久しぶりに見ると綺麗だな……」
「ですね」
俺たちは、2人揃ってしゃがんで花火を見る。ほどなくして、絶え間なく燃え続け、発されていた火花が止まる。そして、またあたりには静寂と暗闇が降りてきた。
だが、そんな静かな光景とは反対に、俺たちのテンションはというと──
「さ、2本目いくか!」
「はい!」
それはもう、上がりまくっていた。
大学生なんて、まだまだ子どもなのかもしれないな、と感じた。
まあ、そう感じたからといって、はしゃぐのをやめるつもりはまったくないのだけれど。
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