第11話 パッと輝く
そんな他愛のない話をしつつ、食べ続けること10分ほど。
唐突に、ドン、と芯に響く音が聞こえた。
「お、花火はじまったか」
「ですね。ここから見えたりしませんかねえ……」
そう言いながら、雨空はベランダへと向かう。
「まあ見えても小さくだろうな」
それを追って、俺もベランダへ向かう。
ドン、ドドン、と絶え間なく音だけは聞こえてくるが、どうだろうか。
「うーん……こ、これは……」
「み、見え……てるといえば見えてる……のか……?」
残念ながら、外に見えるのはどこかからは見えている咲いた大輪ではなく、その端っこ。ほんの少しだけ見えている。それが花火と言ってもいいのかは微妙なラインだが。
「……諦めた方が良さそうだな」
「……ですね。…………見たかったなあ、花火」
予想以上に激しく落ち込む雨空に、もしやと思い声をかける。
「なあ、お前もしかして花火見たことないのか?」
まさかと思うが、どうも雨空の実家はど田舎にあるようだ。もしそうだったとしてもおかしくはない。
「はい、わたしの住んでた辺りにはそもそも花火大会がなかったもので……」
本当に見たことなかったのか……。日本人は花火を見たことないなんてこと、あるとは思っていなかったから驚きだ。
「そ、そうか……。ま、だったらいつか、ちょっと頑張って見に行くか」
そう言うと、雨空はぱあっ、と表情を明るくして、
「っ! はい! 楽しみです!」
そう言って、笑った。その笑顔はきっと、どんな花火にも負けないものだ、なんて思うくらいには、いい笑顔だった。
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