第10話 食事と雰囲気と
買い漁った屋台の食べ物をテーブルに広げ、俺たちはいつもより少し早めの夕食をとっていた。
「屋台の食べ物ってなぜか美味いよな。なんでなんだろ」
なぜか屋台の焼きそばが美味いことに、ふと疑問を覚え、そう呟く。
「雰囲気というか、気持ちの問題というか。そんな感じじゃないですか? ほら、旅行先で食べるご飯は美味しい、みたいな」
はむ、とたこ焼きを頬張る雨空。特大サイズのたこ焼きは、彼女の口には大きかったらしく、頬を膨らませながらはふはふ言っている。小動物感があって可愛いなこいつ……。
「そういうもんか。まあ旅行先で食う飯、食ってるもの一緒でも普段より美味いよな」
「人間、空気とか気分に左右されるものなのかもしれませんね」
「たしかにな。高いもの食っても緊張してたりすると美味くないし」
「そんなことがあったんですか?」
はむ、と次は鈴カステラを口に放り込みながら首を傾げる雨空。
「今年の正月明けてすぐくらいに親戚の結婚式があったんだよ。で、そこで出てきた食事にキャビアがのってた」
「なんで緊張したんです?」
「その親戚がほとんど会ったことのない人でな……。生まれてすぐに1回会ってるらしいんだけど、まあ覚えてねえし。それでなんか肩身が狭くてな……」
鈴カステラを眺めながら話していると、雨空がこちらに袋を差し出す。そこからひとつ取り、口に放り込んだ。やっぱり美味いなこれ。
「あぁ……そういう……。ありますあります。わたしは遠い親戚の結婚式でした。なんであれ呼ぶんですかね。わたしたち的にはしんどいんですけど」
「そうなんだよなあ。ほんとやめてほしい」
「わたしたちの結婚式は規模は小さく質を上げたものにしましょうね」
「っ!? ……何言ってんだお前」
雨空は、焦る俺を満足そうに見てぱちん、とウィンクをする。
……してやられた。
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