第2話 そんな決まりはない

「お待たせしました」


ゴトリ、とテーブルに置かれるのはガラス製の大きな器。その中には、夏の風物詩ともいえる白い麺が盛られている。


「お、久しぶりに普通にそうめんか」


「まだ結構残っててこのままだと来年まで持ち越しそうなので……」


「やっぱりもらってきすぎたか……」


先日、帰省したときにもらって帰って来たのだが、思ったよりも多かったらしい。そもそもそうめん一袋がどれくらいなのか知らなかったせいでもあるが。そうめんってあえて自分で買わないし。


薬味を入れたつゆに麺をつけ、ずぞぞ、とすする。普通にうまい。夏って感じがするな。


「ま、二人で地道に食っていけば来月にはなくなるだろ」


「毎日そうめんでいいなら、ですけどね」


「……昼だけ?」


「夜もです」


「よし、諦めよう。どうせ10月も暑いんだ。10月にそうめんを食ってはいけないなんて決まりはない」


「なんとなく季節感がおかしくなる気はしますけどね……。まあ、少し工夫してはみますけど」


少し、なんて言ってはいるが、雨空のそうめん料理のレパートリーは非常に多い。すべて思いつきで作っているらしいことがさらに驚きだ。


「毎度のことながら助かる」


「いえ、わたしも食費が減るので。ウィンウィンってやつですね」


「……カタカナ使うのやめろや大学生かよ」


「大学生ですが!?」

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