幕間

さすがの俺も、そこまで鈍感ではない。


雨空が落とそうとしている、狙っているという男は、多分俺なのだろう。


そうでもなければ、男の家で、食事に掃除といった家事をしたり、朝から起こしに来たりはしないだろう。


まあ、あくまでモテない男の推測でしかないのだが。


もし、それが真実だったとして。


だからといって、わざわざ察してこちらから言うつもりはない。


俺は、今の関係が気に入っているのだ。もうしばらくはこのままでいたい。


下手に関係を変えるのが怖いとも言えるかもしれない。


今は先輩と後輩という関係だからこそ、成り立っていることもあるのだろう。それが、形を変えることで上手くいかなくなるかもしれない。


そのリスクは、俺にとっては大きすぎる。


だから、雨空には悪いが、もう少し気づかないふりをする。


雨空に、気付かれないように。


そして。



自分自身に、気付かれないように。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る