第4話 雨空蒼衣と結婚願望
「美味しかったです……!」
食べ終えた俺たちは、また課題に戻るべく、帰路についていた。腹ごなしにもちょうどいい距離感だ。
「次はつけ麺じゃなくて普通にラーメンでもいいかもな」
「いいですね、と言いたいところですけど、適度にしましょうね。偏った食事は健康に悪いです。あと麺類ばっかりは太ります」
「わかってるよ。……うん? 最後のは俺関係ないな?」
「そんなことないですよ、先輩もバランス考えて食べないと太りますよ。そうなったらただでさえモテないのにもうダメです。結婚できません」
「別に結婚したいと思ってねえなあ。あとしれっとモテないとか毒入れるのやめろ。事実だから否定しにくいだろ」
「事実だからこそいいかな、と。ていうか先輩、結婚願望ないんですか?」
雨空が、軽く首を傾げつつ、こちらを見上げて聞いてくる。
「ねえな、今のところ。下手に結婚して自由がなくなるより好きに生きていきたい」
「最近そういう人、増えてるらしいですね」
「結婚にメリット感じられない人が増えてるんだろ。あとは相手がいない」
「ああ……なるほど……」
「納得してんじゃねえよ」
憐みの目でこっち見るんじゃねえ。
「そういうお前はどうなんだ?」
「と、言いますと?」
「結婚する気があるのかないのか」
「ありますよ」
「へえ、あるのか」
ちょっと意外だった。雨空はバリバリ働いて独身貴族のコースだと勝手に思っていた。
「ちなみに、今狙ってるやつとかいるのか?」
「……いますよ」
「いんの!?」
あまりの衝撃に大声で聞き返してしまう。
「はい、今全力で落としにかかってる人がいます」
「そ、そうなのか……」
全く気づいていなかった。そうだったのか。……ショック? 別に受けてませんよ? というか──
「狙ってるやつがいるのに、俺のとこに来てて大丈夫なのか?」
普通、そういう人がいるときは他の男の家に上がるのはマイナス評価になると思うのだが。
「…………」
これを聞いた雨空は、こちらを無言で見つめていた。
「な、なんだよ」
「………………」
じとっ、と半目で見続けられる。
俺、おかしいこと言ってない……よな?
「…………はぁ……」
しばらくすると、何かを諦めたようなため息によって、沈黙が終わる。ついでにジト目も終わっていた。
「先輩」
「ん?」
「先輩はもう少し、色々考えて生きた方がいいと思いますよ」
「まるで何も考えてないみたいな言い方するな」
「何も考えてないから言ってるんです」
「ひどい言われようだ……」
そんなやりとりのうちに、気づけばもうアパートはすぐそこに見えていた。
「それで、改めて聞くけど」
「なんですか?」
「お前、俺の家にいていいのか?」
「いいんですよ。むしろその方が都合がいいです」
「……お前、変な男捕まえようとしてない? 先輩すごく心配だわ」
そんな変な趣味のやつ、絶対ロクな人間じゃない。
「たしかに変な人ですね。あと心配なのは先輩の頭です」
「さっきから切れ味上がってない?」
「研いだのは先輩です」
「ええー……」
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