0か100か

@asahika

第1話

私は0か100かだ。白か黒かだ。中途半端はない。


人間関係においては、興味があるかないかだ。

自分に対し、脅威となるかならないかだ。

興味があればのめりこみ。興味がなければ手放す。

脅威となれば対応し、ならなければ放置する。

情に厚い人という印象を持たれれば、その逆、非情な人との印象を持たれる場合もある。

何に対しても両極端だ。

恋愛は、楽しいか楽しくないかだ。

そのため、楽しい時期をすぎると長続きしない。

そもそも、その人に興味があれば粘着質となり、興味が覚めれば手放すのだ。関係が続くはずもない。

自分勝手なんだろう。

野口美和はそう自分を評価する。

30歳を過ぎると、自分という者がみえてくる。

ちょっと前、ある歌手の歌詞でみかけた単語を用いると、(自分の)取り扱い説明書…がわかってくるというものだろう。


私の育った家庭は決して幸せな家庭ではなかった。機能不全の家庭だと表現した方が早い。

私の母親は19歳の時に野口家に嫁に来た。当時、野口家には父親の母(姑)と姉(小姑)がいた。

姉(小姑)は精神的な病を患っており、妄想が強く、何かと美和の母親につらくあたっていた。

物を盗られたと言っては母親を泥棒扱いし、親戚や、ご近所にも吹聴してまわり、母親はご近所からも総スカンをくらっていた。

姑も味方するどころか、小姑と一緒になり母親への嫌がらせを繰り返した。19歳と若かった母親は、世間知らずだった事もあり、上手に対応する事も立ち向かう事もできず、毎晩泣いては美和の父親(夫)に「家から出よう」と訴えていた。

決まって父親からは、「姉さんは病気だから…」「長男だから親・きょうだいを守らないと…」との言葉が返ってくるばかりで寄り添う事もなく,味方してくれる事もなく、母親はただただ孤独だった。

母親の心の闇は当然のごとく子供たちに向けられた。

いつもピリピリとし余裕がなく怒りっぽい母親。ヒステリーを思い切りぶつけられる。

さらには小姑の妄想は子供たちに向く事もあり、気の休まる落ち着ける家庭ではなかった。

そんな幼少期を過ごした自分の人格形成が上手くいくはずはない。

学生時代は円滑な人間関係を築けず、根暗だった。他者との距離感もうまくつかめず、次第に自分の殻に閉じこもる様になり、漫画やアニメに没頭する様になった。

高校で心機一転。そんな自分を変えたくてキャラを作った。

今思うとあの時期はそうとう無理をしていたんだと思う。

自分の気持ちをわかってくれない両親にも、家庭環境にも腹を立て、反抗した。

でも、この時期があったからこそ、人の顔をみてびくびくおびえる自分ではなく、本来の自分を取り戻したと言えるだろう。


元々の素材は悪くなく、磨けば光った。

そんな自分を周囲は放っておくわけがなかった。

常に男性の影を体にまとわりつかせ、一見華やかに見える日常を送っていた。

それは本来の自分ではなく、なんと表現したらいいのか…。地に足つかない毎日だといった表現が似合う…そんな日常…。

今思うと黒歴史の始まり…。





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