異世界だけど縛りプレイをしてもいいですか?

凍てつけ

第1話

 まばたきをした瞬間、目の前に白いマリモが浮かんでいた。

 白いっていうか輝いてて、マリモっていうか燃えてるみたいな、理科の教科書に載ってた太陽みたいなものが、浮かんでいた。

「あ、すいません」

 しゃべった。ん?

「こちらで手違いがあったみたいで、間違えて死なせちゃいました」

 マリモがしゃべってる!?

「なので、転生させようと思うんですよ。何か問題とかあります?」

「……ん?」

「はい、じゃあ転生させますね」

 いや、今の「ん」は疑問の方です。了承の方じゃないです。え、待ってくれない感じですか?

「待ってくれない感じです。こっちも暇じゃないんです」

 あ、そうなんですか。白いマリモにもやることがあるんだ。

「マリモじゃなくて管理者ね? 白じゃなくて、支配領域ね?」

 いや、専門用語並べられてもわからないよ。

 てか、うん。やっと理解が追い付いた。

 転生ね。転生か。死んでなくね? いや、最初にそんな感じの事言ってたな。

「こっちの責任だから、優遇するとも言った」

 優遇、優遇ねー。たとえば?

「スキルに才能、容姿に爵位。ありとあらゆる全て。あっちの管理者に話しはしてあるから、好きなやつを選んでいいよ」

 へー。いくらでももらえるのかな?

「限度はある。決まった量選んでほしい。少なくても多くてもダメなの」

 管理者的に貸し借りは作れないって言うこと?

「そう。……あなたと話すのは愉しい。転生したあとも、たまに話してあげる」

 誉められてる? 暇じゃないとか言ってなかったか?

「……」

とりあえずありがとう。

「どういたしまして。……あ、準備が整ったみたい。行ってらっしゃい」

 急だなぁ。じゃあ、行ってきます。

 あ、行ってきますって言ったの何年ぶりだろ……



「おかえり。気分はどう?」

 声が聞こえると、すーっと意識が明瞭になってきた。

 ただいま。

「うん、おかえり。気分は?」

 ファイン。もしかして同じ人? 人じゃなくて管理者か?

「そう。正解。正解特典はないけどね」

 あっちの管理者と変わるんじゃなかったっけ?

「変わってくれた。それより、決めて。あなたへの授け物を」

 そう言われても、ピンと来ないよ。

「えぇ? スキルに才能、容姿に爵位。この四つを大枠として考えて、選ぶといいかも」

 なるほど、まず爵位は要らないかな。才能は、どういう意味?

「今まで無かった才能を得られる。例えるなら、剣の才能とか、絵描きの才能とか。ちなみに、スキルは、元の才能にプラスするもの。スキルがなくても、才能があれば、大体の事はできる。才能がなければ、なにもできない」

 ん? つまり、才能はみんなもってるもの、すべての基礎になるものか。

 スキルはプラスアルファ。上乗せになるのかな?

「全てがそうなるとは限らない。まあ、どうせわからないだろうから、体験しながらわかっていけばいい」

 あ、説明始めたのそっちなのに放棄するんですね。

 あー、じゃあ容姿は?

「性別から髪の毛一本に至るまで、全て選ぶことができる。言い忘れてたけど、才能には適正も入ってる」

 容姿っていうか、キャラメイクみたいだな。

 で、才能には適正? 魔法適正みたいな?

「正解。ただし正解特典はない」

 何かめんどくさいな。ていうか、そう思うように説明してない?

「……気のせい」

 ……あ、おまかせとか?

「する? しちゃう? 今なら私が選んであげるよ? どうする?」

 うわ、急に押しが強くなった。

 え? やりたいの?

「うん」

 じゃあ頼むわ。爵位は要らないから。

「りょうりょう。他に要望は? 特にない?」

 ないかな。あ、鑑定みたいなネタバレ能力は要らないから。

「ネタバレ? まあ、わかった。じゃあ、やっちゃうね」

 頼むわ。

「……終わった。名前は何がいいの?」

 名前? 選べんの?

「特別に選ばせてあげる。好きなのでいいよ」

 なら決まってる。

 I am every fine.

「つまるところ、フィーネ・イアメベリーっていうこと?」

 正解。特典はないけどな。

「準備終わり。……これは、私たち管理者の失敗により起きた事態。あなたには人生を楽しむ権利があります。私たちが協力することはないですが、邪魔をすることもありません。新たな人生に楽しみが生まれることを願いましょう」

 どうも。


 ゆっくりと、意識が薄れていった。

「今回の原因をお教えします。その世界で勇者召喚が行われたからです。勇者として選ばれた魂は、流産によって死ぬ未来の赤子に定着します。その者を観察するのも、面白いかもしれません。……よき人生を」

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