神話
昔々、とても強い力が在った。
後に「神」と呼ばれる様になる「それ」は、ある日突然「世界」を創った。
「神」の強い氣を固めて造られた「世界」は、その強すぎる力故に上手く廻らなかった。停滞した氣を循環させようと力を使えば、只でさえ飽和状態である世界が崩壊してしまう可能性があるからだ。
そしてこれ以上力を注がぬ為、神は己の身体の一部から「仔」を生み出し、それらに世界を維持するよう命じた。
降り積もった氣を循環させる者、それを世界に巡らせる者。
いつしかそれら「神」の子らも神々と呼ばれ、それらを造った存在は祖たる「父神」と呼ばれる様になった。
幾度も幾度も氣を巡らせ、漸く世界は上手く廻り始めたが、依然として飽和状態である事に変わりはない。そこで神は、氣を喰らう事で自身を形成する様々な生物を生み出し、「世界」に解き放った。
羽を持つもの、四足で歩くもの、二つ足のもの……。様々な形の生物を造り、氣を喰らわせる事で漸く世界は安定するようになった。
その「世界」に数多の生物が存在するようになり、父神は神々の補佐として、世界の一部から再び力あるものを造った。
それらは後に「精霊」と呼ばれるようになり、神々には及ばないもののとても強い力を持ち、神々に仕えていた。
様々な種が混在するその世界は、争いもない、「楽園」と呼べるものだった。
そして数百、数千と気が廻った頃、「神」の仔である神々は、父神の真似をして「世界」を造った。
だが見様見真似で造り出した世界は上手くいかず、造りかけたその「世界」破棄し、再び一から造り出した。
今度こそは上手くいくと思われたのだが、己が己を造れない様に、彼等の造るものは父神の造ったものとは違い、不完全であった。
父神が自分達を造った様に、その「世界」の調停者とする為に造ったものは、何の力も持たないか弱い存在だった。
その神々の造りし世界に生きるものは、己の存在を保つ事さえ出来ず、何らかの器に保護される事で、漸くその存在を保つ事が出来る程に脆弱なものであった。
そして「楽園」の様に永遠を生きる事は出来ず、己以外のものを喰らう事で命を繋ぎ、それでも定期的に「器」を取り換えなければならなかった。
やがてその遊びに飽いた神々は、「それ」の管理を精霊達に任せ、己の世界に戻って行った。
稀に気が向きその「世界」に触れる神々が居た所為か、精霊や神々の名は地上と呼ばれるその世界の者達に知れわたったが、最初に「神々」さえも造り出したその存在の名を知る者は誰も居なかった――
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