聖女様とデート(2)

(※ステラ視点)


 うぅ……緊張します。


 私達は今、隣町のショッピングモールに行く為に電車に乗っています。

 私達の家の近くには細々としたものなら揃っているのですが、大きな物となると、こうして隣町に行かなくてはいけません。


 ま、まぁ……こ、こうして如月さんと長くいられるという面では……いいかもしれませんが……。


 ガタンゴトンと、電車が揺れる。


 その反動で、正面にいる柊さんがこちらに近づいてしまいます。


「っと、悪い」


「い、いえっ!大丈夫です!」


 土曜日というのに、電車の中は満員。

 電車内はおしくらまんじゅうの状態になってしまい、少し揺れればぶつかってしまうほど窮屈なものです。


 しかし、如月さんが気を使ってくれたおかげか、私は電車内の端で誰ともぶつかることもありません。

 何と、如月さんが私を囲うように壁になってくれているのです。


 あくまで自然に。

 そうなるようにさりげなく私を気遣ってくれるなんて……流石ですっ!かっこいいです!


 それにしても―――――


(ち、近くないですかっ!?)


 少し顔を上げただけで、如月さんの顔が間近に見えてしまう。

 う、嬉しいのですが……これはこれで恥ずかしいというかっ!

 さ、さっきから緊張しっぱなしです……。


「ごめんな、柊。もう少し遅く乗っていればこんなに満員じゃなかったんだが……」


「い、いえっ!気にしないでください!」


「まぁ、あと少しの辛抱だからさ、もうちょっと耐えてくれ」


 そ、それはどっちの意味で耐えろと言っているのでしょうか……!?

 この窮屈さですか!?それとも如月さんとの距離が近い事ですか!?


 窮屈さは別にいいのですが……如月さんがこんなに近いのは耐えられそうにありません!


 い、いやって訳じゃなくて、嬉しいのですが………早く着いてくださいっ!



 ♦♦♦



「いやー、結構しんどかったなー」


「そ、そうですね……」


「まさか、休日なのにあんなにいっぱいだったなんて、考えることはみんな同じ何だろうな」


 あれから10分程電車に揺られ、ようやくショッピングモールの最寄り駅へと到着しました。

 ……おかしいですね、まだ着いたばかりだというのにどっと疲れた気分です。


 ま、まだ顔が熱いです……。


 私は横目で如月さんを見る。

 疲れた体をほぐすように背伸びをしている彼は、平然としているようだった。


 ど、どうして如月さんは平気なのでしょうか?

 私はこんなにもドキドキしてしまったのに、如月さんは何も感じていないのでしょうか?

 ……そ、それは悔しいですね。

 何でそう思ってしまうかは分かりませんけどもっ!もうちょっとドキドキしてくれてもいいと思うのです!

 何でか分かりませんけどもっ!


「んじゃ、早速行きますかね」


「はい…」


 私は少しモヤモヤした気分を味わいながらも、彼の背中を追っていきました。

 そして、視線が彼の空いている手にいきます。


 け、けど……今日は一応…デ、デート……ですもんね。

 だったら……許されます…よね?


「き、如月さんっ!」


「おう、どうした?」


「そ、その……失礼しますっ!」


 私は勢いよく、彼の空いている手を強く握った。


「デ、デートですもんね……これぐらいしないと」


「そうだな、じゃあしっかりと握っておかないとな」


 そして、如月さんは平然と私の手を優しく握り返してくれます。

 え?な、何の反応もなしですかっ!?


 私がこんなに勇気を振り絞って手を握ったのに、そんなあっさり返されても……。

 もうちょっと、照れるとか恥ずかしがるとかして欲しいですっ!


 チラりと如月さんの方を見る。


(……あ、そんなことありませんでしたね)


 如月さんの顔は、ほんのりと顔が赤くなっており、少しだけ私から視線を逸らしています。

 ふふっ、平然なフリして実は如月さんもドキドキしてくれたんですね。


「さぁ、行きましょう如月さん!」


「どうしたんだよ急に元気だして?」


 だって、それは―――――


「如月さんも、ドキドキしてくれているって分かったからです!」


「ッ!?……あぁ、そうかい」


「そうです!」


 私は嬉しくなって、如月さんの手を引いて早足でショッピングモールに向かうのでした。



 ♦♦♦



 ……何故か、今日は柊が積極的な気がする。

 いや、本人は無意識なのかもしれないのだが……なんか、こう……隙が多い気がするんだ。


 突然手を握ってきたり、腕に抱きついてきたり、肩を寄せてきたりと、スキンシップが激しい。

 注意しようと思ったのだが、本人がめちゃくちゃ楽しそうなものだから……注意しづらい。


 これって、やっぱりデートなのだろうか?

 傍から見たら、俺たちってカップルに見えてしまっているのだろうか?


 ……やばい、柊がデートと言い始めてから、今日はかなり意識してしまっている。

 さっきから、心臓が五月蝿いほどドキドキしているのだが、何とか平静を装って頑張っている。

 頑張れ!俺の理性よ!柊の猛攻に耐えるんだ!



 というわけで、やって来ましたホームセンター。

 一応、このショッピングモールは地域で1番大きく、色んなお店がいっぱいある。

 なので、ショッピングモールにホームセンターという少し場違いなお店もここにはあるのだ。


「早速ですが、まずは柊の調理器具を調達しようと思います!」


「はい!よろしくお願いします!」


 俺がそう言うと、柊は空いた反対側の手で、思い切り敬礼の動作をした。


 ……やばいっ、この子超可愛すぎるんですけど?



 俺の理性……今日しっかり保てるかなぁ…?

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