英国カノジョは“らぶゆー”じゃなくてスキと言いたい【※旧タイトル:初恋を忘れられない俺に、助けた我がクラスの可愛い聖女様が近づいてくる】
楓原 こうた【書籍6シリーズ発売中】
プロローグ
この度、今作―――『初恋を忘れられない俺に、助けた我がクラスの可愛い聖女様が近づいてくる』の書籍化が決定いたしました!
完結後再開…そんな中でも、ここまで読んでくださった皆様のおかげだと思っております!
レーベルはファンタジア文庫様、8/20に書籍発売です💦
書影は、ホームページ及び近況ノートにて公開しております!!
絶賛、予約受付中ですm(__)m
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中学二年生の夏。
俺、
どこにでもありふれているような恋ではなく、正真正銘ただ一つの俺だけの衝撃的な恋。
特別な事件、きっかけや接点があったわけでもない。
ただ、純粋に彼女を見て恋に落ちてしまったのだ。
それはとある合同授業での話。
俺と彼女は別々のクラスだったのだが、今回先生が体調不良で初めて他クラスと一緒に授業を受けたことが初まり。
俺はいつものように大きな多目的ホールで仲のいい友達と話していた。
「いや、真中。流石にそれは酷いんじゃないんじゃないかな?」
「うるさい、彼女持ちは全て理不尽な目に合うというのは相場が決まっているんだよ」
そしてそんな時、突然その彼女が現れたんだ。
「しぃー! 今は授業中だよ?」
長い黒髪に透き通った瞳。愛くるしい顔立ちと明るい雰囲気の少女。
そして、現れた彼女は桜色の唇に人差し指を当てて俺達に可愛く注意をしてきた。
「あ、ごめんね」
「……」
俺達にそう言うと、彼女は元いた場所へと戻っていった。
名前も顔すら知らなかったその後ろ姿に俺は目を奪われてしまう。
「ほら、真中の所為で怒られちゃったじゃないか————って、どうしたの?」
友達は、ぼーっとしている俺を心配してくれてるのか、顔を覗き込んでくる。
けど、その時の俺は友達になんて視界に入らず、ただ彼女の後姿しか目に入っていなかった。
「……なぁ、颯太。あいつってなんていう名前だっけ?」
「うん? ……あぁ、あの子は隣のクラスの
「……そうか」
全然知らなかった。
彼女の名前が神無月ということも、隣のクラスにあんな子がいることすら、今まで知らなかったし分からなかった。
————けどこの瞬間、俺の中ではとてつもないぐらい大きな存在となる。
「……颯太。俺、好きになっちゃったかもしれない」
「……はぁッ!?」
そう、俺はこんな出来事だけは生まれて初めての恋に落ちてしまったのだ。
彼女を見ただけで、彼女に話しかけられただけで俺の心臓が高鳴るのを感じる。
これが恋なんだということは一発で分かってしまった。
……我ながら単純だったと思う。
けど、俺はこの想いをどうしても実らせたくなった。
♦♦♦
それからの俺はとにかく頑張ったと思う。
彼女の趣味、趣向、得意不得意。
全ての情報を友達から聞き出して、彼女の理想の男子になれるように努力した。
髪も、長く耳までかかっていたところを、清潔感溢れるように短くした。
料理ができる人が好きという話を聞いて、家庭科部や料理教室にも足を運んだ。 運動できる人はかっこいいということを聞いて、ジムに通ったりもした。
更に、無かった接点を作るべく、勇気を振り絞って彼女に話しかけにも行った。
全ては彼女と付き合えるようになる為。
その為には、俺は努力は惜しまなかった。
中学二年という長い時間を、彼女と横で歩いていけるために費やしたのだ。
そして、中学三年になった四月のある日。
俺は意を決して彼女に告白をしようとした。
彼女と結ばれるため、今までの努力を彼女に認めてもらう為。
だから、俺は彼女がいる教室へと足を運ぶ。
先ほどからうるさい心臓を何とか聞かれないように平静を装いながら。
そして、教室のドアを開けると————
「え!? 沙耶香ちゃん付き合っちゃったの!?」
「おめでとう! どんな人!?」
「他の学校の男の子だよ~」
神無月が他の女子と楽しそうに話す声が聞こえてくる。
それを聞いて俺は思わず膝から崩れ落ちそうになった。
急に足場がなくなるような浮遊感、全身から力が抜けていくような脱力感、そして————
「……嘘だろ?」
こうして、俺の努力は実らないまま初恋は終わってしまった。
♦♦♦
あの時の気持ちは高校一年生になっても忘れきれない。
好きだった彼女の姿を思い出すだけでまだ胸が高鳴ってしまう。
────今でも、彼女は付き合っているらしい。
本当は、新しい恋に踏み切ったほうがいいに決まっている。
けど、俺はどうしても叶わないこの初恋が捨てきれないのだ。
………けど、そんな俺はある日一人の女の子と出会ったんだ。
意図したことはない。
ただ、ほんの少しのきっかけで彼女と関わることになった。
「起きてください真中さん、もう朝ですよ」
彼女がいなければ、俺は今頃どのレールを走っていたのだろうか?
未練がましく、彼女の届かない背中を追っていたのだろうか?
「……おう」
「ほんとうに、お寝坊さんですね」
優しく包んでくれるような温かいやさしさ。
彼女は恩を返したかったというが、俺はもうすでに返しきれない恩を彼女からもらっている。
出会った当初は警戒をしつつ、どこか気に入らなかったんだ。
しかし、今では互いに気の許せる大切な関係になってしまった。
そんな彼女のおかげで、俺は過去を振り返らずに前に進んでいける。
————だからこそ、
「ありがとう」
俺と出会ってくれて、俺を支えてくれて、そばにいてくれて。
ありがとう。
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