自然者達の力

鶴闇

プロローグ ①

 某自衛隊駐屯地内

「撃て!撃てぇぇぇぇ!」

 小隊長の必死な叫びが駐屯地十字通路内に響き渡る

 それもそのはず突如自衛隊内で保有しているASR(Auto Shooting Robot)が動き出し、暴走を起こしたためである。


 軍事技術が発達した今、自衛隊や軍隊の主力装備はこのASRとなっている。

 具体的にASRの見た目は足の部分がキャタピラ、胴体は四角型、両腕はガトリング、頭はバイザー型となっており、起動中はバイザーが光る。装甲もASR同士の撃ちあいができるほどの厚さとなっており、換装機能も備える。そのため戦力は人間と比べ10倍程となる。


「くそっ!どうしてこうなった!」

 小隊長が必死に訴える


「分かりません! 恐らくハッキングかと!」

 焦りながらも部下が問いに答える


「緊急通信です! 基地前方に多数のASRを発見!」

 その場にいた一同は『苦虫を噛み潰した顔』をしながらもライフルを撃ち続けている。だが心の奥底では全滅する。という考えを皆がしている。


 何故なら上記で説明した通りASRの戦力差は一目瞭然であるからだ。

 彼らは生き残れる確率が著しく下がったのだ。

 そしてもう一つの決め手がASRが主力となった現代では配備、運用の効率化をするために兵士全体の半分ほどをASRの整備兵に回しているからだ。

 つまり戦力を機械頼みにしているのだ。


「何がセキュリティ万全の最新戦闘ロボだ… 暴走してるじゃないか… 味方だってどんどん死んでいるんだぞ…」

 真っ先に小隊長がボソッと呟く


「仕方がない…生き残れる確率は低いと思うが、基地を放棄する。 逃げるぞ…」

 とその時、小隊長の隣にいた部下が後ろからの弾丸で瞬く間に肉塊となった。

 撃たれた経験は無いが、ガトリングに撃たれれば誰でも一瞬である

 十字通路の後ろからASRが撃ってきたのだ。

 小隊長の頬に鮮血が走る。 そして数秒後その場にいた全員が状況を理解する。


「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 部下が大きな声、そして『自分もこうなるのか』という涙交じりの恐怖の顔をさらけ出す。


「落ち着け! 冷静に対処するんだっ! !?」

 気付くとASRは既に小隊長に銃口を向けていた

 ガトリングの銃口が『ウィィィィーッ』と独特な音を出しながらゆっくりと回転していき、弾丸を放出する準備をしていく。 弾丸を放つまでの刹那、両腕の一発目は両方とも小隊長の両サイドを横切った。


「なっ!?」

 小隊長が思わず声をだしてしまう。


 銃弾が横切ったのを驚いてもいるが、それよりも驚くのが自分の目の前には高校生くらいの容姿をした青年がASRの両腕を炎の剣で切ったからだ。

 斬撃に続き男は左足を軸に左回転をしながら横に剣を叩きつけた。

 見事にASRは真っ二つになり、頭部バイザーは光を失い機能を停止した。


「君は?」

 率直な小隊長の声が青年に届く

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