ただ、自分の人生を生きるということ

@harumori27

第1話

『本日も、外出は制限されています。許可証を発行されていたない方々は、外出をしないよう、お気を付けください』

 ドローンから流れる無機質な合成音声が、窓の外から聞こえる。このドローンは、アナウンス以外にも、外出者の見張りも同時に行っている。

 太平洋戦争の頃は、こんな便利な道具がなくてよかったな、と思う。当時今ほどの技術があったら、より凄惨な事態になっていただろう。

 僕は、<16:00 ~ 18:00>と書かれた外出許可証を手に、外に出る。今日買い出しに行かなければ、食べるものもない。

 

 外に出て、駅前へと足を運ぶ。以前、様々な店が営業をしていて、にぎやかだった通りは、今や見る影もない。どの店もシャッターがーしまっており、ほとんどの店には「閉店」との張り紙が張られている。ちらほらと、「休業」との張り紙もみられるが、本当かどうかは定かではない。

 食料品店に向かって歩いていると、警察に声をかけられた。外出許可証を見せろということだったので、おとなしく見せる。こうやって警察に声を掛けられるたびに、外出する自由さえ奪われてしまったことを実感する。


 警察は、許可証を確認すると、僕のもとからさっさと去っていった。

いったいどうしてこんなことになってしまったのか。去っていく警察の背中を眺めながら、たった少し前には確かに存在した過去について思いを巡らせる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る