第154話 五悪2

そこは地下にある会議室。


灯りが無い真っ暗の部屋に、6席ある最高級の木製の丸テーブルが、置かれていた。


上座の椅子は空席だが、他の五つの席にはそれぞれ座っている人影がある。


黒いローブを着た老人の影がアラクネの影に話し掛ける。


「チュウトウ、どうしてもやらないと言うのか? 盗みはお前の得意分野じゃぞ」


「オンジュ、何度も言わせるな。水竜の杖を持っているのはユウマの仲間だ。我はユウマには手を出さない」


その時、鬼の影が会話に割り込んだ。


「がっはっは、チュウトウ! 怖じ気付いたかぁ! 情けないなぁ。がっはっは」


鬼の影にトヨシモと呼ばれていた影が応える。


「セッショウ、あなたは実際にユウマに会って無いから強気になるのよ。彼には勝てないわ」


「ジャイン、貴様も貴様だ。貴様とチュウトウの二人が揃っていて、おめおめと逃げ帰るしか出来なかった癖に、口出しするなぁ!」


「じゃあ、あんた一人で行って来なよ。ユウマ達を殺して水竜の杖を奪えば良いじゃん」


ピエロの影がジャインとセッショウが喧嘩しそうになったのを止める。


「まあ、待ってよ。ここは僕、モウゴに任せて欲しいなぁ。ケケケケ」


「モウゴがそう言うなら、私に異存は無いわ。この都市に匿って貰った恩もあるしね」


「そうそう、ジャインとチュウトウは態と背後関係を漏らした王国の諜報員ドブネズミ達の後始末があるでしょ。そろそろ帝国の貴族が、王国の第三王子殺害を指示した情報も王国側に伝わってるはずさ、ケケケケ」


「そうね。王国と帝国の開戦も時間の問題かしら。何時までもドブネズミに周りを嗅ぎ回られるのも不快だわ」


「我の蜘蛛達もドブネズミ達の監視に飽きて来てるからな」


「ケケケケ、じゃあ、ドブネズミの始末はジャインとチュウトウで、水竜の杖は僕とオンジュが受け持とう。セッショウはヤバくなった時にお願いするよ」


「モウゴとオンジュにユウマを殺せるのか? ジャインとチュウトウが逃げた奴だぞ」


「確かに僕とオンジュが直接戦えば負けるかもね。ケケケケ」


「儂は負けるつもりはないがのう」


「ケケケケ、直接やらなければ良いのさ。この都市にはオンジュの傀儡が沢山いる。僕が計画を立てるから、彼らにやって貰おう。オンジュ、力を貸してくれ」


「承知した。儂の傀儡を存分に利用するが良い」


「良いだろう。この都市攻略の責任者はモウゴだ。俺も今は養って貰ってる身だ。お主に任せよう。がっはっは」


「ケケケケ、まあ、僕に任せてくれれば悪いようにはしないよ」


「モウゴのお手並みを拝見させて貰うわね」


と言ってジャインの影が消えると、チュウトウ、モウゴの影も消えた。


部屋に残ったのは、モウゴとオンジュの二人。


「オンジュ、それでは作戦を説明しよう。ケケケケ」


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五悪の紹介です。


邪婬 (ジャイン)

トヨシモとして王国に潜入していた元騎士団諜報部隊にオネェの騎士。

『黒の群盗』を背後で操っていた。


偸盗 (チュウトウ)

王国で闇組織『蜘蛛の牙』を従えていたアラクネ。


飲酒 (オンジュ)

黒いローブを着た老人。


殺生 (セッショウ)

鬼の影


妄語 (モウゴ)

ピエロの影

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