第60話 騎士団襲撃

朝食を食べて、ブラックドッグのクロドと一緒に冒険者ギルドに来た。


依頼を受ける時間帯と言う事もあり、ギルドは賑わいを見せていたが、いつもより騒がしい気もする。


「あっ!ユウマくん!クロちゃんもお早う」

冒険者のアヤカさんが声を掛けて来た。


「お早うワン」

「アヤカさん、お早うございます。何だかいつもより騒がしい気がするのですが、何かありましたか?」


「それがねぇ。昨日の夜に騎士団が襲撃されて、捕らえていた『蜘蛛の牙』の人達が逃げたらしいの」


「えっ!マジですか、はぁ」


態々言いに行ったのに、襲撃された上、逃げられるなんて……。


「お早う、ユウマ」

そこに『黒紅の無頼』の探索者シーカーのリュウセイも現れた。


「お早うございます。リュウセイさん」


「ユウマが捕まえた『蜘蛛の牙』の奴らを、騎士団が逃がしたぞ」


「えっ!『蜘蛛の牙』ってユウマくんが捕まえたの? 騎士団長が裸にした『蜘蛛の牙』の人達を、凄く嫌な笑顔で、ニヤつきながら連行したんじゃないの? 腐女子冒険者の間で超有名な話だったんだけど……」


あら、全裸にしたのが、変な方向に行っちゃったみたいだ。


それにしても腐女子冒険者って、冒険者にも腐女子がいるんだぁ。


「ははは、ユウマが『蜘蛛の牙』の拠点を制圧したのは、間違い無いよ。その後、騎士団が良いところを持ってったみたいだ」


「そうだったんだぁ。えっ!と言う事は、『蜘蛛の牙』の人達を裸にしたのは……、ユウマくん? もしかしたら、ユウマくんって……」


「いやいや、そんな趣味無いから、勘弁してくださいよぉ」


「そうよねぇ。」

と言いながら意味深の目線。


もしかしたら腐女子冒険者って、アヤカさん……?


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃、領主の館で、リミツナ伯爵に怒鳴られて、土下座するサキヨマ騎士団長とトカツモ副団長、リマサノの3人。


「馬鹿者!! 騎士団が襲撃を受けて、犯罪者共を全員逃がすとは、前代未聞の不祥事だぁ!」


「も、申し訳御座いません!」


トカツモ副団長とリマサノは、全身に傷だらけで火傷のあとも見える。


回復薬で治療する間もなく呼び出され、叱責を受けていた。


一方サキヨマは無傷。


「それで、サキヨマは騎士団が襲撃された時、何処で何をしていた?」


「は、はぁ。が、外出……、街を、巡回、け、警備中であり……」


要領を得ないサキヨマの返答。それもそのはず、騎士団情報部から業務範囲外の情報を得る為の交換条件として、男とデートしてたなんて、口が裂けても言えるはずもない。


「ちっ、門兵から報告があったぞ。先日サキヨマからは、『蜘蛛の牙』は騎士団が制圧し捕縛したと報告があったが、冒険者ユウマが制圧したそうだな?」


「そ、それは──」


「それは、何だ!損害無く拠点を制圧出来る実力がある騎士団が、犯罪者共に襲撃されて為す術も無く、呆気なく犯罪者共を奪還されるなんて、おかしいと思っていたのだ!」


「い、いや、それは、急襲された為であり、襲撃に来た輩の実力が高かった事により……」


「嘘の報告をしてまで自分達の手柄とした上に、冒険者ユウマから警告されたにも関わらず警戒を怠る始末。そんなお前等を今直ぐ退団させたいのだが、犯罪者共を壊滅させる為の戦力も必要なので……」


ゴクリっ。

生唾をのみ込み、目を見開き裁定を待つ3人。


「平騎士に降格だ。新たな騎士団幹部を別途選出する。それまで謹慎だあああああああ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る