記録49 闘技大会開催のお知らせ
「珍しいな、こうやって魔族みんなを集めてイベントの発表とか」
「噂で聞いたんだが、今度のイベントは、姫様と魔王代理様の2人が考えたイベントらしいぞ」
「へぇ、姫様と魔王代理様が……面白そうじゃないか」
魔王城の中で1番広くて大きな広間に、魔族たちは集まっていた。
広間の舞台に、転移魔法陣が現れる。そして、クローチェと魔王代理がスッと現れた。
ざわざわとしていた魔族たちは静かになり、クローチェと魔王代理に注目する。
「みんな、集まってくれてありがとう〜!さぁ~いよいよ次回開催のイベントは、みんなが待ちに待っていた、大暴れ出来ちゃうイベントだよ!!」
クローチェがそう言えば、魔族たちは感嘆の声を上げた。
そこで魔王代理が一歩前に出る。
「ふふ、今度のイベントは、クローチェと一緒に企画したの。みんな、全力で楽しんでちょうだいね。優勝者へのご褒美も、とびっきり豪華だから期待していて」
集まっていた魔族たちは、もう待ちきれないといった様子だ。
「魔王代理様ー!もっと詳しく説明して欲しいです!」
一人の魔族がそう口にすると、他の魔族も同じようなことを口にした。
魔王代理はニコッと笑い、説明を始めた。
「次回開催のイベント……闘技大会では、私とクローチェが考えた様々な条件で戦ってもらうわ。面白おかしい条件から、厳しい条件……本当にたくさんの条件を考えたの。闘技大会は来週開催だから、それまで鍛錬、頑張ってね」
「魔王代理様〜さっき言っていた、とびっきり豪華なご褒美について教えてくれますか〜?」
「それはね……」
魔族たちは、黙って、じっと魔王代理を凝視する。
「……ふふ、内緒よ!当日に発表するわ」
魔王代理とクローチェはニッコリ笑う。
「えぇ~なんだろう」
「魔王代理様がどんなご褒美を用意してるのか、考察するのも面白いな……!」
魔族たちのワクワクした表情が、舞台にいるクローチェと魔王代理にもよく見えた。
その日の夜。
クローチェはフィクとリンゼンが運んできた大量の紙束を見て、キラキラした瞳になった。
「それ、もしかして!今度の闘技大会の参加者リスト!?」
「えぇ、姫様。こんなにたくさんの魔族が参加するみたいですよ」
フィクは、ぽんっと紙束を叩いた。
「とりあえず……参加受付をして、参加者リストを作っていますが……当日の、飛び込み参加……OKなんですよね〜……」
リンゼンは紙束を綺麗に整えながらそう言った。
「飛び込み参加OKにした方が面白いでしょ?あ〜良かった!こんなにたくさんの魔族が参加するなら、盛り上がること間違いないね!」
クローチェはニコニコ笑顔だ。
「ふふふ……当日、楽しみですね。あの……この参加者リスト、魔王代理様のところに……持っていきますね。フィク、ここまで一緒に運んでくれて……ありがとうございます。あとは、私一人で大丈夫ですので……」
リンゼンはフィクが持っていた紙束を受け取ると、ゆっくりとした足取りで魔王代理の執務室へと向かっていった。
リンゼンの後ろ姿を見つつ、フィクはクローチェにたずねた。
「姫様……闘技大会の優勝者へのご褒美……って一体何ですか?」
「内緒ってお母様が言ってたでしょ?当日を楽しみに待ってて!」
「魔王代理様……こちらが、闘技大会の参加者リスト……です」
「あぁ、リンゼンありがとう。まぁ!こんなにたくさんの魔族が参加するのね。闘技大会は盛り上がること間違いないわね」
魔王代理のその言葉を聞いたリンゼンは、ふふっと笑った。
「先ほど……姫様も、同じことを言っていました。こんなにたくさんの魔族が参加するなら、盛り上がること間違いないね……と」
「ふふふ、似たもの親子ねぇ」
「あの……魔王代理様」
「なにかしら?」
「闘技大会の件……なのですが、私に手伝えることは……ありませんか?通常業務と並行して……闘技大会の準備、大変……なのでは?」
リンゼンが少し心配そうな顔をして魔王代理を見た。
「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ。クローチェと一緒にやれば、楽しくって、あっという間に出来ちゃうの!」
魔王代理の表情は、キラキラと輝いている。本当は疲れているのに我慢している……ということは無さそうだ。
「楽しいなら、良かったです。助けが必要でしたら……いつでも呼んでください」
リンゼンは、穏やかな笑みを浮かべてそう言った。
魔王代理とクローチェは、問題なく闘技大会開催当日を迎えた。
魔王城内は、ガヤガヤと騒がしく、そして魔族たちの興奮と熱気で溢れていた。
クローチェは、会場に集まった魔族たちを見て、声を弾ませる。
「ひゃ〜!すごい熱気!うっかりしたら熱気にやられて倒れちゃいそう」
「本当にすごいですね……。なんだか私もソワソワしてしまいます」
クローチェの隣にいたフィクも、ボソッとそう呟いた。
「だよねだよね〜!なんかこっちも、ソワソワ、ワクワクしちゃうよね!」
「えぇ、ですので姫様、くれぐれも気をつけてくださいね。姫様は、注意力散漫なところもありますから、ぼーっと会場内を歩いてはいけませんよ!転んだり、ぶつけたりして、ケガをしてはいけませんから!」
「わ、わかってるよ〜!……それに今日は、ぼーっとなんかしてられないから。もちろんケガなんてもってのほか!」
クローチェはキリッとした表情でそう言った。
すると、クローチェの側に転移魔法陣が現れ、スッと魔王代理が登場した。
「クローチェ、準備はいいかしら?」
「あ、お母様!うん、準備バッチリ!!」
クローチェは、パッと魔王代理の側に駆け寄る。
「それじゃあ、開会宣言をしましょうか」
魔王代理がそう言えば、クローチェはコクリと頷いた。
「いってらっしゃいませ。魔王代理様、姫様」
フィクは丁寧にお辞儀をして、2人を見送った。
「あ、魔王代理様と姫様だ!」
舞台に現れた2人を見つけた魔族が声を上げた。
「いよいよ始まるんだな……闘技大会!」
魔族たちは、ワクワクした様子で舞台に立つ魔王代理とクローチェを見ていた。
「みなさーん!闘技大会に来てくれてありがとう〜!参加してくれる魔族、観戦に来た魔族!こんなにもたくさんの魔族が来てくれて、とっても嬉しいです!」
クローチェは、両手をいっぱい振って、笑顔でそう語る。
そして、魔王代理が一歩前に出る。
「みんな待ちきれなくてしょうがないと思うから、大事なことをパッと言うわね。今日の闘技大会で優勝者に与える褒美について……」
魔族たちは息を呑んで、魔王代理を見る。
「一言でいえば、『何でも』よ」
しばしの沈黙。
「……な、なんでも?」
魔族たちは首を傾げた。
「詳しく言うと……何でも叶えてあげるってことよ。可能な限り、優勝者の望みを叶えてあげるわ」
魔王代理がそう説明すると、理解した魔族たちは、ざわざわとし始めた。
魔王代理はニッコリ笑う。
「ふふ、たとえば例をあげるなら……『魔王の座』とかね」
魔王代理がそう言った瞬間、ざわざわした声はピタリと止み……。
「「魔王の座ぁああああ!?」」
耳がおかしくなるんじゃないかと思うほどの叫び声が魔王城内に響いた。
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