記録11 純白のドレスの結末
魔族たちはノリノリでクローチェの為のファッションショーの準備をし、あっと言う間に会場が完成した。
「すご~い!はや~い!」
クローチェは、歓喜の声をあげる。
ライトの代わりである色とりどりの人魂が可愛らしかった。
「ま、まさか・・・私が、作ったふ、服が、沢山の魔族たちに見られるなんて・・・き、緊張してきた・・・てか、死にそうです・・・」
ルナーリアが真っ青な顔になり、プルプルと震える。
「私は、姫様が転んで仕事を増やさないか心配ですね」
フィクは軽くため息をつく。
「大丈夫だって!あ、準備OK?じゃ、行ってくるね~!2人とも、しっかり見ててね!」
クローチェは意気揚々とステージへと向かった。その瞬間だった。
バンッ!!
扉が派手に開けられそこにいたのは・・・
栗色の髪に金の瞳を持つ少年。
勇者リザシオンがいた。
後ろにはいつもの格闘家と魔術師もいる。
突然の勇者たちの登場に驚きを隠せない魔族たち。クローチェもまた、唖然だった。
「どうしてっ!?アラームが鳴って無いじゃない!!」
「どういう事だっ!?この部屋に設定されたアラームはどうなってる!!」
「あ!壊れてる!?」
「はぁ!?どういう事だよ!誰だよ!アラーム壊したの!?」
「あ、僕かも~ファッションショーのステージ作る時、重たい物を運んでる時、壁にぶつけた気がする~」
「あんた、ふざけてるのっ!?」
「これは、攻撃のチャンス・・・!」
「なんか、よくわからんが、チャンスだぞ!リザシオン!!」
金髪の格闘家が隣を見れば、リザシオンがいない。いや、正確にはしゃがんでいた。
「ど、どうしたんだっ!?リザシオン!」
格闘家と魔術師が慌てリザシオンの顔を見れば・・・
「ちょ、なんで、鼻血だしてんの!?」
「リザシオン、顔も真っ赤だぞ!?」
リザシオンは、顔を真っ赤にさせながら鼻血をたらたらと垂らしていた。
(や、ヤバイ・・・クローチェが、可愛すぎる・・・いや、正確に言えば、神秘的で、綺麗で、女神・・・いつものクローチェとは雰囲気がガラッと変わって・・・うわあぁあ!!なんて、言葉にしたらいいのかわからんっ!)
リザシオンの頭の中はクローチェの事でいっぱいだった。
今のクローチェは、純白のエンパイアラインのドレスに身を包み、髪は上品に結い上げ白百合の髪飾りをしていた。
そうこうしている内に仲間たちのお陰で鼻血の処置が終わる。
「しっかりしてくれよっ!リザシオン!」
「あぁ、もう既に魔族たちが戦闘準備が終わってる・・・!リザシオン、頑張ってよ!」
「あ、あぁ・・・」
「ひ、姫様!自室に行きましょうっ!」
フィクはクローチェを引っ張るがクローチェは動かない。
「いいえ、さっさと勇者り、り・・・勇者を倒すわっ!魔族たちは私が守るんだから!」
クローチェは魔方陣から大斧を取り出し走り出す。
「ごめんっ!ルナーリアッ!衣装、着替えてる暇ないからこのまま行くねっ!」
「ひ、姫様っ!」
ルナーリアが手を伸ばしかけ、誰かが手を掴む。掴んだのはフィクだ。
「ルナーリア様!姫様を守るの手伝ってくださいっ!」
「は、はいっ・・・!!」
二人はクローチェを追いかけ走り出した。
「勇者!今日こそ首を切り落としあげる!」
「そ、それは楽しみだ・・・じゃなくてっ!今日こそ、き、君にっ・・・」
しかし、それ以上、リザシオンは何も言わない。
「私に、何?」
クローチェは眉をひそめつつ大斧を降る。
リザシオンは大斧の攻撃を避ける。
(あ゛あ゛あ゛あ゛!!クローチェの姿が眩しいっ!くそっ、男なら、彼女が好きならまっすぐ伝えろよっ!君の事が好きだって!)
リザシオンはクローチェの攻撃を避けつつどうやって伝えるか悩んでいた。
そんな時、クローチェの大斧の攻撃を剣で受け止めようとしたら・・・
サクッ
「あ」
リザシオンの剣でクローチェの髪飾りを切り落とす。白百合の髪飾りは床に落ち、少し髪が切れ、結い上げまとめていた髪がほどける。クセのある黒髪がふわりと揺れる。
リザシオンは見とれて動きが鈍る。
(ヤバイ、今日、幸せ・・・)
「やだっ!戦闘中なのにっ」
クローチェは、ほどけた髪に気がいく。
だから、魔術師が呪文を唱えている事に二人は気づかなかった。
「水よ!潤せ!濡らせ!」
リザシオンとクローチェの足元に水色の魔方陣が現れ水が溢れ出した。
「「ひ、姫様っ!」」
フィクとルナーリアが叫ぶ。
「ちょ、お前!リザシオンも巻き込んでどうすんだよっ!」
「え、嘘!?ま、まぁ、リザシオンなら大丈夫でしょ?」
魔方陣から溢れ出した水は止まり、びしょ濡れの二人が立ち尽くしていた。
そしてそこで、大事件が起きた。
「ゲホッ、突然何なのよっ」
「ゴホッ水がっ・・・」
そこで、リザシオンがふと顔をあげて、そのまま顔を真っ赤にして動かなくなった。
「ひっ、姫様ぁあっ!!」
フィクが走り、羽でクローチェの体を隠す。
「ちょっと、フィクどうしたの?」
「姫様、鈍感すぎっ!見たらわかる!てか、そんなのどうでもいいっ誰か!姫様を部屋にっ!」
「わ、わ、私が、つれてきますっ!ひ、姫様!こちらに!」
ルナーリアがクローチェの体を隠すようにクローチェをつれていこうとする。
そこで、クローチェは自分の服を見る。くせ毛の黒髪は全身に張り付き、そして・・・
水に濡れて透けていた。
透けても見えるのはぺったんこの胸をカバーするタンクトップとモコモコのパンツ。
だから、大丈夫! とは、いかない。
「な、な、なぁあああぁっ!?」
クローチェは叫ぶ。
その瞬間、クローチェの回りを赤黒い霧が渦巻く。
『落ち着きなさい、クローチェ・・・フィク、ルナーリア、クローチェの事、頼むわ』
魔王代理が霧の中から現れクローチェたちが赤黒い霧に包まれ消える。
「ま、魔王代理っ!」
リザシオンは慌て剣を持ち直し、格闘家と魔術師も構えるがあっという間に三人は赤黒い炎に包まれる。
「なっ!?」
『勇者リザシオン・・・よくも、娘の髪を切ったわね。それと、そこの魔術師、娘をずぶ濡れにさせたわね、それに、真っ白な服を着てる時に・・・』
そこで、ふっと魔王代理が息を吹き掛けると三人は赤黒い炎と共に吹き飛ばされ魔王城から追い出された。
「いったぁあ!?くそっ魔王代理め!」
「今、治癒魔法をかけるっ・・・」
「またか・・・」
リザシオンが呆然と呟いたその時
『娘が、そんなに欲しいなら私を倒さないといけないわよ・・・勇者リザシオン』
リザシオンの耳元で魔王代理の声が聞こえる。辺りを見回すが、側には黒い羽が一枚落ちているだけだった。
リザシオンは黒く、禍々しい魔王城を見上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます