好きですが何か?

うんちマン

パンドラの山本

 ボランティア部の部室。

 長机一つと椅子が二つ並んでいるだけの部室で、やたら私の横顔をチラ見してくる男。

 同じ部活の後輩の山本は、おそらく私の事が好きだ。

 これは、決して自惚れなんかではない。……と思う。

「先輩、どうしたんですか? 僕の顔をじろじろ見ちゃって」

「……え、いや、別に」

 「お前だよ!」というツッコミはあえていれない。

 ……それにしても、聞きづらい。「なあ、山本。私のこと好きなのー?」なんて、たとえ好きである確率が高くとも聞けるわけがない!

 こうなったら、山本の口から直接言ってもらうしかないわけだが……。

「……うわっ!」

 横を向いた途端、息が掛かるほどの距離に山本がいた。

「や」

「や?」

「やまもとぉぉぉぉぉ―――――!!!!!」

 何をやっているんだ貴様は! バかなのか? そんな距離にいたらびっくりするじゃないか! それにちょっとドキドキするじゃないかっ!!

「落ち着いてください、月本先輩。その真っ赤な顔から何が言いたいのかは分かりますが、全部声に出てません」

「そ、そんな事はどうでもいい! それよりなんなんだその距離はっ!」

 ダメだ、怒りと驚きで頭がくらくらしてきた。

 ……やっぱり好きか聞くのは今度にしよ―――

「距離は関係ないのですが、先輩。……もしかして、僕が先輩の事好きなんじゃないかとか考えてました?」

「ふえ?」

「もしかしてと思ったんですが、僕が毎日、先輩の横顔見まくってるから勘違いしちゃったんですか?」

 私が考えてること全部バレてた? ていうか、毎日横顔見まくってるってちょっとキモいな。

 ……じゃなくて! 勘違い? 山本は私の横顔を見まくってただけで好きじゃ、なかった?

「んっ―――!!!」

「先輩?」

 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!! これ絶対寝る前に思い出すやつじゃん!

「……大丈夫ですか? 先輩」

「あ、ああ~大丈夫大丈夫。なーんだ勘違いかー。良かった良かったっ!」

 私はそのままカバンを手にして、席を立った。

「じゃあ、今日の部活は終わり! またな、山本」

 なるべく笑顔で。

「先輩」

 振り向くと、山本はギリギリ息の掛からない距離にいた。

「勘違いじゃないですから。俺、先輩の事好きだから」

「……え?」

「じゃあ、部活終わったんで帰ります。お疲れさまでした」

「え!? いや、待て!」

「それじゃあ」

「おぉい! 待って! 帰るな、やまもとぉぉぉぉぉ―――――!!!!!」

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