10 【EP6】

【EP6】


「ささっ。早くこっちに来て下さいっ」


「いつまでもテンション高いなぁ」

ベッドを陣取り隣をバンバンと叩くクノミちゃん。

因みに服装は僕含め寝巻き用の浴衣にチェンジ。

嫌がる彼女から色気のねートレーナーを引っ剥がしてやった。

やはり浴衣の方がエロくて良い。

「さっき寝ましたからねっ、ギンギンですっ」

「さいですか。よいしょっと(ギシッ)ふぅ。じゃ、僕寝るから静かにしてね」

「おーはーなーしーしーまーしょーおーよー」

「もうっ、僕は背中向けて寝るからね(ゴロン)」

「いけずー」

と。


グラグラグラ……。


なんだか嫌な揺れを感じた。

「地震?」

「ああ、『雪崩』ですよ。どこか遠くで起きたのでしょう」

「今更だけど、ここは大丈夫なの?」

「女将さんによると今まで巻き込まれたことはないらしいし大丈夫でしょう。毎度女将さんが『外の様子を見に』行きますが、私達には『外には出るな』と言われてます」

「ふぅん……女将さんが、ねぇ」

「ふふ、怖いなら抱き締めてあげますっ」

後ろから抱き付いてクンクンモフモフベタベタしてくるクノミちゃん。

「はぁ。今更だけどさー、男に対する抵抗感とか無いよね。距離感近いというか。女将さんには『誘惑し過ぎるな』とか教えられてないの?」

「えー? 『誠心誠意お世話してね』としか」

それは……つまり『そういう事』も含めたお世話を許容してるという事かい。

「でも、確かに、警戒心が無かったかと言われれば嘘になりますね。女の子だらけの職場で過ごしてますので、いざ自分の番が来た時『うまくお世話出来るかな』と、みんなで不安がってました」

「それは正しいよ。君みたいな可愛い子がベタベタして来たら『辛抱たまらんっ』て普通の男は押し倒すよ。酷い男(僕じゃない)に当たったら目も当てられない」

「んー、でも、私の知る限りでは酷い目にあったお姉様は居ませんねぇ。みんな、決まって『早く会いに行きたい会いに行きたい』と飢えてましたよ」

「たまたま運良く良い人に当たったのか……」

それとも、女将さんが二人の相性を『吟味』した結果なのか。

「ま、それでも警戒心が薄いのは事実だ。解ったら以降は男にベタベタくっつくのはやめなよ」

「はーいっ(ギュ)」

納得した彼女は僕を抱き締める力を強めた。

「おらぁ! (ゴッ)」

「鼻が痛い!」

「言う事聞かない奴には後頭部頭突きの刑だよ。はぁ……どうやら君には『性』というものの恐ろしさを躰で教えるしかないようだ」

「わくわく」

「やっぱやめた。寝るか」

「ええっ!?」

するりと僕が壁側から抜けるとそのまま壁にゴンッと後頭部をぶつける彼女。

しかし頭の痛みなどどうでもいいらしく。

「今絶対ヤる流れだったじゃ無いですか! また背中向けて寝ないで下さいっ」

「なんだヤるだの下品な事を言って」

「むぅぅっ、この湧き上がる躰の火照りはどうすればっ」

「お預け感ってのも覚えておきなさい。それが次回への良いスパイスとなるよ」

「瓏さぁぁん……」


少しして スー……スー…… と寝息を立て始めた彼女。


乱れた浴衣を整えてやり、布団を掛けてやって……アレ? 僕お世話されるポジションじゃなかったっけ?

次起きた時、多分朝だけど、起きがけに即発情しなきゃ良いけど。


ゴゴゴ--


ん、また地鳴りか。

僕はクノミちゃんを残し、ベッドから降りた。

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