高3生、夏、文化祭

三浦花

プロローグ

2019年5月、留学中の友人に会いに三浦花はローマに来ていた。5日間でイタリアをめぐる予定だったのでが、最終日急遽一日予定が合わなくなってしまったので、一人ローマ観光をすることになった。その日は、あいにくの雨だった。どうしようかと思いながら朝食を食べに外に出ると、近くの教会がみえた。今日は日曜日だ。日曜礼拝やってるのかな、見たことないし覗けるものなのかな。カフェで朝食を済ませ、中をのぞくと、ちょうど礼拝を行っていた。入っても大丈夫かおどおどしていると、後ろから中国人らしき夫婦が目の前の長椅子に腰かけたので、それに倣って長椅子の端にひっそりと腰をおろした。

オルガンの音と静かな合唱が満たしていた。高い天井を見上げると、全面にきらびやかな絵がえがかれていて、窓にはすべてステンドグラスがはめられていた。こんな世界もあるものなのか。静かな感動を覚える。聖歌とオルガンと雨の音が心地いい。せっかくなので、しばらくこの雰囲気に浸っていることにした。


教会のステンドグラス


ああ。なんでこんな時に思い出すのだろうか。

きらきらと瑞々しく、きゅっと胸を締め付けられるような切ない、思い出。

普段は、頭の片隅にもない、思い出そうとしても思い出すことのできない、記憶。

こんな異国の地で、ひょんなことから顔をだした。

思い出されることを待っていたかのように、鮮明に。


まだ、世界を知らなかったころ。未来を考えなかったころ。

学校という狭い世界で、目の前のことに必死だったころの、お話。

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