いいね!の魔力

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 僕は、平良たいらヒトシ。極めて平均的な高校に通う、極めて平均的な高校二年生。クラスに一人はいる、目立たず存在感の薄い生徒だ。


 体型も顔立ちも平均的。女の子にも全くモテたことがない。得意科目もこれと言ってない。どれも平均くらいの成績だ。何かスポーツや芸術に秀でているわけでもないので、所属は帰宅部。だけど、そんな僕でもやっぱり気になっている女の子はいる。あくまで「気になっている」だけだ。その子のことを本当に好きなのかどうかも分からないし、ましてや付き合ってるわけでもない。もちろん付き合いたくない、というわけでは決してないのだが……


 同じクラスの、瀬川ミクさん。割と目鼻立ちがはっきりしている、どっちかというと可愛いというより美人系の顔立ちだ。きれいなだけでなく成績も優秀で、地元の国立大学の理学部数学科を目指している。僕も数学は得意な方だが、彼女にはかなわない。才色兼備とは彼女のことだろう。


 彼女はいつもスクールカースト上位の連中に囲まれて楽しそうだ。とても僕がお近づきになれる余地などありはしない。いや、別にお近づきになりたいと思っているわけでもないけど……


 まあでも、教室の席は割と僕と近いので、休み時間になると彼女の周りに群がる仲間たちの話が自然に耳に入ってくる。それをなんとなしに聞いていると……


 どうやら瀬川さんはフェイスグラムを始めたらしい。世界的に人気の SNS 。仲間たちもみなやっているようだ。


 ……。


 僕も、始めてみようかな……


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