第二話 砂漠に寒雷の魔女
先が見えないほど過酷な砂漠のど真ん中。だがかつてここを通った者たちが作った舗装された細道。この道なりに足を進めれば一番安全に街にたどり着けると言われていいる。
しかし今日は運悪く少女がお下劣な男2人に絡まれていた!
というより口論していた。
「おいおいーお嬢ちゃんよーそんなわがままいっちゃあーこまるぜ」
「あんたたち。本気でそんな馬鹿なことを言っているの」
「俺たちゃーいつでも本気だぜ。ゲへへ」
お下劣な男は描写したくもないが格好は世紀末のようなトゲトゲな服装。
そして鼻ピアスとモヒカンがトレンドで似ている顔つき。
一人はヒョロヒョロな体格。
そしてもう一人はダルマのような体つきをしていた。
少女は整った顔に水色の瞳。銀と青が混ざった髪色。
日焼け対策か白い布のマントを巻きフードを被っている。
その隙間から見える薄茶色のミリタリーブーツ。
そんな華奢な少女に武器を叩きながら近づいてきた。
「だからよー旅人がここを通るには金が必要になったんだよ。通行料って奴よ」
「そうそう!ここいらは俺達が仕切ってるかなぁ。まぁ女なら体で払うのもありだがーなー。アシャシャ」
少女は臆することなく口を開く
「そんな話。聞いたことないわ。あんた達が勝手に言ってるだけじゃないの?」
ヒョロガリとゴリダルが顔を見合わせた。
「お嬢ちゃん気が強いのは結構なことだがよ自分の情報不足で怒っちゃーいけねえな」
「そうだぜー現地の人間の情報に素直に耳を傾けなきゃーなぁ
常に情報というのは新しくなっていくんだぜぇー」
少女は腕についている液晶画面がついている水色のバンドを指で操作し始めると
下品な男達の前に映像が出現した。
そこには書類が映し出されこの地方の条約のようなものが記述されていた。
*説明しよう先ほど少女が操作した腕についているバンドのような物はジャーバンドといい
近くの町の情報やそれ以外の情報も教えてくれる便利グッツアイテム!他にも便利機能が多々あるがそれは、おいおい説明しよう。
因みにジャーバンドはこの世界の三人に一人は所有している。
私達が普段使っている通信機器と言えばわかるだろう。
アップルウオ……おっと話が止まる所だった
どういう作りなのかわからない謎技術。
「どこにもそんなこと書いてないじゃない!この嘘つき」
不機嫌になった少女は近づいてくるゴリダルを手の平で突き飛ばす。
「あだだ!おーおー傷つくなー。いかんなー」
ゴリダルはわざとらしく大袈裟によろけて見せた。
「大丈夫かーケヘヘ。てめえ俺達に手を出してタダで済むと思ってんのかぁー」
ヒョロが少女のマントを掴みかかるも少女は動じない。
「そもそもここは国道に指定されたじゃない。だったら税金払ってる私が余計に支払う義務はないわ」
「うるせーアマァ!ここはカシバシ様のテリトリーなんだよ!人様のテリトリーをわざわざ通らせてやっているんだから気持ちとして通行税を払うのが義務ってもんだろ!」
「それこそわたしに関係ないじゃない!地元での粋がり話は地元住人だけにして」
「て!てめえ言わせておけばぁ!」
ヒョロはたまらずナイフを取り出し少女にナイフを振りかざした。
少女はマントを翻し寸前のところで回避するとそのまま後ろに下がりヒョロガリとゴリダルから距離をとった。
「ほう!こいつのナイフをかわすとはなかなかの回避力。そこいらの嬢ちゃんとはちと違うようだな」
ゴリダルは感心しながら懐から取り出したメリケンを手に装着する。
「こんなところで無駄に体力減らすわけにもいかないのよ。だからこのまま黙ってどっかに行けば見逃してあげるわ」
「ふん。そんな強がりどこまで吐けるかなーおれのナックルやこいつのナイフは技量はそこまで高くないがどれも小回りが利く武器だ!無傷で逃げるのは無理な話だぜ」
少女はバンドを確認すると事細かく。その人物の情報が表示された。
「確かに経歴からみてもそこのヒョロさんより強いみたいね。そのかわりしょーもないことしてとっ捕まってるけど」
ゴリダル(仮):過去に町内力自慢大会で優勝した経歴を持つ。が乱暴な性格で現行犯確保経験あり。注意が必要。
ヒョロガリ(仮):ナイフを振り回し人を怪我させた亭主にボコられ捕まる。
えっ個人情報をのせても大丈夫かって?そこまで考えなくていい!ここの住民はこれが普通だと思ってくれればそれでいい。犯罪者に人権はない
「余裕のフリするのは止めな。本当は怖くてたまらないんだろー俺達の経歴」
「あーあー可哀そうだねー大人しく言う事を聞いてればよー。まったく俺たちを怒らしちまって」
男どもはじりじりと少女に近づく
「最後に聞きたいことあるんだけど」
少女が訪ねると男どもはニタニタ笑う。
「最後ー安心しなよお嬢ちゃん殺したりなんてしないからよ」
「そうそうーちょいと楽しむだけだからよぉーヒョヒョヒョ」
少女は頭を掻きながら苛立ちため息をついた。
「あんた達みたいなバカチンになに言ってもだめね」
そう言うと左手でマントをつかみとバサッと華麗に脱ぎ捨てた。
空にまったマントは粉々になりチラチラと雪のように砂漠の砂に降り注ぐ。
「最後っていうのはあんた達のことよ」
マントを剥いで現れたのは長い髪に白いチノパンに水色のYシャツ。
「「思いのほかラフそしてタイラー!」」
思わず男どもは驚いた。
少女の眉が一瞬ぴくッと動くも気にせず左手を握ると先ほど舞っていた雪の結晶が集まっていく!
「スワード」
少女が小さくつぶやくと左手から全て氷でできた剣が出現した。
「その髪型、その目、水色のラフな格好!タイラ!そして氷の魔法で作った剣
まさか!おまえ最近噂に聞く寒雷(かんらい)の魔女か!」
ゴリダルは何かに気付いたのか目を見開きすぐさま少女から距離をとるように後ろに下がった。
「このタイラ女しってるのか!」
ヒョロはゴリダルの下に駆け寄り訪ねた。
ゴリダルは噴き出る汗を手でぬぐいながら口を開く
「ああ最近WNW<ワルネットワーク>で話題になっている女だ。お前も聞いたことあるはずだぞ。そいつは氷の魔法や剣をつかい俺らみたいに絡んできた輩を
氷漬けの彫刻にしたり下手すりゃアジトの建物ごと生きたまま閉じ込めるという。
氷漬けになった人間は死なずに生きており冷たさと孤独、痛みで悲痛な叫びがこだまするという。そんな恐怖と悲しみの声を聞きながら笑うんだ寒雷の魔女は…!
直近の情報だと俺らカシバシ団のライバルと言われる盗賊組織ボロックの団長が恥ずかしい格好で氷漬けにされ今でもアジト周辺からは悲痛な叫び声が聞こえるみたいだ」
「氷だけにひええええ」
ヒョロは自分を抱きしめながら軽くおびえた。
「ちょっ!人を悪人みたいにいわないでよ結構あることないこと盛ってるし!
……まあでもーそのおかげで私もすっかり名がしられちゃったけどー」
寒雷の魔女は照れた。ゴリダルは拳を強く握った。
「しかし逆にピンチはチャンスだ。ボロック団長を倒したこいつを倒せば」
「なるほど!ヒャハー俺たちカシバシ団も砂漠越えで有名になり」
「いずれはボスの右腕に」
「イエーイ俺は左ぃー」
「「ガハハハハハハハ」」
野郎二人は肩を組み笑う。その二人をみてすっかり冷めた寒雷の魔女は面倒くさそうに肩を落とした。
「あの。わたしもう行っていい?というかとっとと行きたいんだけど」
寒雷の魔女に声をかけられたアホ馬鹿男共はハッとして再び武器を構えた。
「おっとそうだった。覚悟しろ寒雷の魔女!」
「俺たちの息の合った連携を見せてやるぜ」
結局そうなるのか、と寒雷の魔女はため息をつき男達と向かい合った
その時だった。
「ウエーイ」
どこからかヘンテコな鳴き声が広い砂漠に響いた。あまりにも突然。
少女と男たちは驚き声の方向に顔を向けた。目に映ったのは…
「「「「鳥?」」」
声がハモル君。
鳥が真っ直ぐ寒雷の魔女の方に飛んでくる。
すると鳥の後ろから大きな砂ぼこり舞い上がり寒雷の魔女と男達の方に向かってきていた。
「おい寒雷の魔女お前の魔法か!まだ戦闘開始してねえのに汚い真似しやがって」
「キタナイ!マジョキタナイゾ」
ゴリダルたちの文句に寒雷の魔女は眉を顰め首を横に振った。
「はぁ!知らないわよ砂の魔法なんて!よくみなさいよ!こっちは氷の魔法をつかってんのよ!」
「つうことはあれはなんだ?もしかして魔物か!」
ヒョロガリは目を細め向かってくる砂ぼこりを確認した。近づいてくるにつれ正体が見えてくる!
「おいよく見ろ!あれ人じゃねえか!」
ヒョロの言葉の言う通り砂ぼこりを上げているのは確かに人のような形をした何かだ
遠くてハッキリ見えないがカラフルのマントを着ている男がとんでもないスピードで走ってくる。
「まてぇ!おれと戦え!そして食されろ!」
ハッキリした大声を叫びながら三人のいる方に近づいてきた。
相手が人間だと確認して男二人は顔を合わせニヤリと笑う。
「あいつここを通る気だな。金も払わないなんて図々しい」
「ひひ見てろよ寒雷の魔女。俺たちの怖さを!女は殺さずに許すけど男は」
「「死刑」」
近づいてくる男の道をふさぐようにゴリダルとヒョロガリが道を塞ぐように立ち並ぶ
完全に馬鹿二人のターゲットは向かってくる男にシフトチェンジしたらしい
寒雷の魔女にびびったのだろう
「あいつらマジでなんなの。わたしもういっていいのかな」
本来ここを通過するはずだけの寒雷の魔女は困惑していると
「アウエーイ。そこで待ってろソコデマッテロ」
耳元に変な声。寒雷の魔女が慌てて声の方に向くといつの間にか先ほど変な鳴き声で鳴いていた鳥が肩に遠慮なく止まっていた。
振り払おうと手を上げるも……
くちばしは白く少し大きくオレンジ色と白が混じる毛並みとてもキュート。
「かわいい」
寒雷の魔女が思わずつぶやきその手を止めた。
寒雷の魔女さんは変な鳥をお気に入り登録しました。
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