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エリー.ファー

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 好きな小説の話を書きます。

 読んでいて楽しい気持ちになる、そういう小説の題名を書きます。

 本当は、好きな音楽とか、好きなゲームとか、好きなユーチューバーの話を書きたかったけど。

 そういうのじゃなくて、ちゃんとして子として見てもらうために、好きな小説あたりのことをちゃんと言います。

 皆、そういう子のことが好きなのは知ってるので、ちょっとでも気に入ってもらうために小説とかの話を書きます。

 他には好きな科目とか、好きな動物とか、好きな場所とか、好きな友達あたりのことを言えばいいんだと思うんですけど。

 誰も望んでないので、好きな小説の話を書きます。

 いつまで経っても、本当はよく見ていなくせに。

 本当は何にも理解していないくせに。

 そういう子がいいから、そういう子になるようにうるさく言ってきたので、こういうことになりました。

 だから。

 ちゃんと。

 好きな小説の話を書きます。

 

 絶対に嘘をつくなと言われているので、嘘だけはつきません。

 楽しい思いにならなくなるから、絶対に嘘はつきません。

 自分のために生きようとすると、人は皆、嘘をつきます。

 どんなことを考えればひとのためになるのか、どんなことをすればみんなが笑顔になるのかを想い続けるので、嘘をつきません。

 嘘をつくことは悪いことだし、そのことを容認してしまうと嘘はどんどんと大きく広がっていきます。人が不幸になるということです。

 自分を律するためにも、自分以外の人を律するためにも絶対に嘘はつきません。

 お父さんもお母さんも嘘はいけないものだと言うし、お父さんとお母さんは嘘をついたことなんて今まで一度もないそうです。

 お父さんとお母さんが大好きなので、それにならって嘘は絶対につきません。

 嘘をつく子はいけない子です。嘘をついたらその場で大人の人に叱ってもらうしかありません。


 ちくわは我慢して食べます。

 本当は全然好きじゃないけれど、でも食べます。

 ちゃんとしなきゃいけないからです。

 前に水族館に行ったときに、ここにいるおさかなさんが皆最後は磨り潰されてちくわになると教えられてから食べたくなくなったけど。

 ちゃんと食べます。

 残さず食べます。

 ちくわは美味しいものだし、お父さんもお母さんもぱくぱく食べるので、それにならって食べます。そうやってちくわを食べることで、お魚の栄養を吸収することができます。

 好き嫌いなく食べることが一番大事だと思います。

 だから、ちくわをちゃんと食べます。

 前におばあちゃんに無理に食べなくてもいいんだよ、と言われたけれど。

 食べました。

 だって。

 良い子だし。

 ちゃんとした子だからです。


 逃げ出した。

 いつのことだったか。

 十四年も前のこと。

 逃げて逃げて逃げて。

 気が付けば裸足で橋の上にいた。

 可哀そうに、と誰かに言われたけれど。

 そういうものだと認識することでどうにか生き延びた。

 純然たる病なのだと言われても、結局完治させることはできなかった。

 久しく、自分のことを見失うために慌てたのに、思った以上に自分の築いてきたものは大きかった。

 完全に。

 完璧に。

 間違いなく。

 誰よりも。

 父親や母親によく似た何かになった。

 成長なのか。

 諦めから始まる退化なのか。

 もう、よく分からない。

 分からないけれど、もうどうでもよくなって。

 気が付くと、自分のことを赦してしまった。

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