第9話 インターン生の受け入れ始めました!
【前回の『タダ喰い女子高生』復習】
なんなんだ、こいつら…。
私は『わるもんB』に、「おまえ『タダ喰い女子高生』な…」と名前をつけた。
わるもんBは、喜んで抱きついてきて、口を開いた。
「我は『ただ喰い女子高生』であるぞ!そなたの未来に幸あれかし!」
ヒステリックな魔女声!!だった…
「おまえメスかよ…」
私は『わるもん』をつがいで飼うことになってしまった…。
【自己紹介】
私は、変身ヒロイン、キザキ・アカネ二十三歳!(稀崎明音)
私は、正義の味方として、日常をクズみたいに生きるんだと決意した『わるもん』カップルを自宅に軟禁している女の子!飼い主の責任として、きちんと彼らに名前をつけてあげたわ!!
私は決死の覚悟で無断欠勤からの出社!
理由を語らず部長の泣き落とし作戦決行!
それに勝利を納め、定時で帰る途中で痴漢にあって女子高生に説教をされ、腹立ち紛れに外灯を蹴倒したわ!!
で…。
区切りの悪い、第九話…。
戦隊の月イチの日曜ミーティングは、ある意味生存確認的な意味合いなんだろうなと私は思っている。
わざわざ早起きして、顔を合わせる。
別に何か特別な用があるわけではない。
私は、自動会計ソフトを立ち上げて、昨日私が破壊した外灯の修理費が七十万程で計上されているのを眺めながら思っていた。
「七十万の外灯一本破壊して、何のお咎めもなし…」
なんといい組織だとも思うが、ある意味ザル会計なのかも…と思うと色んな意味で、ひとつため息をついた。
国からの助成金が出てるのかなぁ…。
私がログインできる会計の権限レベルでは収益の部門は上層部からの戦隊ヒーロー部門の割り当て金額しか見ることができない。
軍事と一緒で、我々の部署は消費する部署だ。
収益を生むことはない部署なのだけれど、時折戦隊ヒーローぬいぐるみショーのアルバイトで微々たる時給収益が発生することがあったが、雑収入として処理してくださいという指示を受けていた。
みんなで、旅行行けたらいいねーといいながら、その金額は、いつ貯まるとも知れない旅行積立金になっていた。
そんな数字を追いながら、私は司令の訓示を漠然と聞いていた。
司令は言う
「正論は一日二回まで。
そんな決まりが世界には必要だ」
誰も聞いていないけれど、司令は話を続ける。
「正論は実は誰でも吐けるし、大事なのは、その『正論』を押し通せなかった『止むに止まれぬ』理由なんだ…。
正論で人を責めはじめると、全方位からの正論が相手を切り刻むことになってしまう」
そこまで話したら、大きく息を吸い込んで目を瞑って言った。
「だから…。
一日二回くらいのおやつ程度の正論で、世界を少しずつ軌道修正しつつ生きる必要があるかもしれないと思うんだ…」
日曜のミーティングの朝礼で、誰も聞いていない訓示を垂れる戦隊司令。
ひと昔前のいい感じの喫茶店のマスターみたいな風貌のおっちゃんだ。
私を含めて五人のヒーロー達は、各々の作業をしながらなので、本当に聞いていない。司令は、聴かれていない話をするのが仕事なのだ、
多分…。
五人のヒーローは…。
リーダーのレッド
赤星翔太さん(あかぼししょうた)
サブリーダーのブルー
青島海斗さん(あおしまかいと)
渉外のイエロー
浅黄幸治さん(あさぎこうじ)
技術担当のグリーン
深緑 碧くん(みろくあおい)
経理担当の私ピンク
百崎 胡桃(ももさきくるみ)
そう、これは、偽名というか源氏名というか、変身ネーム。
私は稀崎明音だけど、百崎胡桃なのだ。めんどくさい…。
喫茶店マスターみたいな風貌の戦隊司令の名付け親が、ドヤ顔して命名した。
名前のイメージが、なんとなくアニメのロリ顔の巨乳ちゃんみたいなイメージすぎて頭を抱えた。あまりにもあまりにも、ステレオタイプの命名だったので、命名された瞬間に背中がぞわぞわするのを感じた。
高校時代だったら、親友にクルミチャーンと、命名された瞬間に揶揄するように大声で声を合わせて声援を送られたことだろう。
ある日
「なんでわたしは モモサキクルミなんですか?」と、少しおかんむりな口調で聞いた。
司令は、世襲だよ。とだけぶっきらぼうに答えた。
昔々の話さ…と、勿体ぶるように言った。
「そこまで聞いてないし知りたくもないし…」というのが私の感想だった。
さて…。
と、司令はようやく本題に入るように言葉を繋いだ。
2021から、一括採用がなくなるのはみんな知ってるかね?
経団連の会長が、2021年春以降に入社する学生からは一括採用を廃止にすると言ったことが発端なんだがね…。
「我々も、今のうちからそれに備えてないと、優秀な学生を採用し損なってしまうからな。インターンシップの学生を採ることにしたのだけれど」
「はぁ?!」と言ったのは、私だけだった。
みんなキョトンとしている。
正義のヒーローインターンシップ ?なんじゃそりゃ?とばかりに、意見を言うために椅子を蹴倒して思いっきり手を上げて立ち上がった。
「司令!聞いていません!!」
「インターンシップ はお給料とか会計には関わっていないからなぁ。知らせてなかったが…。何か手続きが必要だったかな…?すまん…」
「ちがいます!そういう役職上の問題ではなくて!」
「巨乳の学生ちゃんがいいなー」と赤星さんが言う。
「女子なんですか?」と深緑みろくくんが、顔を赤らめてもじもじしながら言う。
「性別大事ですよ?歓迎会とかするんだったら、お店選ぶときにも考慮しなければいけませんからね!」と浅黄さんが目をキラキラさせて言う。
「ちがいます!性別の問題じゃなくて!」
という私の言葉を無視して、司令が「女性だ…」と呟くと、サブリーダーの青島さん以外がガッツポーズをしたり、手を叩いたり歓声をあげたりした。
「ありえません!正義の味方のヒーロー戦隊の守秘義務はどうなるんですか!?」
「インターンシップ 守秘義務誓約書を交わしてもらうことにしているが、何か問題が…?」
めまいがした。
何かとてつもない倫理観?情報保護に対する認識のイデオロギーレベルでの違いを感じる!彼らが、異星人のように見えてきた…。
次は、変身ヒロイン、キザキ・アカネ(稀崎明音)さん、親友チカちゃん家宅捜索?!…の巻
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