幸運値9999999は最強のチートステータス!? 勇者パーティーを追放された僕ですが、復讐なんかしなくてもシアワセになっちゃいます!

骸兎《クロウサギ》

1-1 突然のクビ宣告!? 悲しいカナシイ別れの日!

「…えっ。今、なんて…?」

「聞こえなかったか? 賛成多数。テメエはもうクビだ」


 勇者ユーシア様から突きつけられた突然の追放宣告に、僕の頭は真っ白になる。


「そんな、僕、何か、みなさんの気に障る事、しちゃいましたか?」

「ハア!? 本気で言ってんのかよ、この役立たずのゴミが!!」


 勇者ユーシア様に、胸倉を掴まれる。

 ものすごい腕力だ。

 痛い、苦しい。


「いっつもいっつも逃げ回ってるだけじゃねえか! テメエみたいなのが居るせいで、イライラすんだよ!」

「そうよそうよ! 勇者様の言うとおりよ!」


 厚化粧の女白魔道士シロマ様が同調する。

 なんでこの人いつも紐みたいな服なんだろう。寒くないのかな。


「あとそのクマ耳もうぜえんだよ! メスに媚びやがってムカつくぜ!!」


 クマ耳は仕方ないじゃないか!

 媚びてないし、獣人なんだから!


「テメエみたいなのをなんていうか知ってるか!? 『無能』ッつうんだよオラ!! なんとか言ったらどうなんだ!?」

「く…………苦し………………うっ……!」

「チッ!!」


 ドサッ。

 僕の体は、冷たい地面に投げ棄てられる。


「……けほけほっ……たっ、たしかに、僕は戦闘中は、逃げ回る事が多いですけどっ」


 勇者ユーシア様の言葉に、僕は唇を噛む。

 彼の言っていることに間違いはない。

 強い敵との戦闘では、僕はもっぱら回避に専念をしていた。


 しかし――それにはちゃんとした理由があったのだ。


「それは、だって、そのことは最初に説明したじゃないですか。僕の能力は、戦闘じゃ使えないって」


 僕の役職ジョブの予言者だ。

 ダンジョンでどの道を進めばいいか。

 どのクエストを受けるべきか。

 武器屋さんや防具屋さんで何を買うべきか。

 食事はどの店で何を食べるべきか。

 エトセトラエトセトラ。

 そういうアドバイスをするのが僕の仕事だ。


 ――と、仲間になる前に念入りに説明をしていたはずだったんだけどな。


「戦闘以外でも足引っ張ってんだよテメエは!! テメエの意味不明クソカスの道案内のせいで、この森ダンジョンに何時間かかってると思ってんだ!?」

「そうよそうよ! まっすぐ行けば小一時間で抜けられた筈の森を、あっちへふらふらこっちへふらふら!」


 勇者ユーシア様は、さらに怒りのボルテージを上げてしまった。女白魔導士シロマ様も、同調する。


「それは――はやく抜けられる道の事は知ってますけど。なんか、なんか、イヤな予感がしたから」

「うわ出た出た出た、出ましたよアベル君のイヤな予感がした・・・・・・・・!」


 大袈裟な身振りで会話に割って入ったのは、眼鏡の男賢者ケンジ様だ。難しい言葉を話すので苦手だが、いくつもスキルを持っていて凄いと思う。


「いまどき論理的じゃないんですよねえ。あ、論理的って言葉の意味わかります? アベル君の人生とは無縁の言葉ですよ」

「そうだ。コイツの『探知』や『鑑定』『分析』の方がよっぽど役に立ってるぜ」

「で、でも、それだけじゃ物事の吉凶は完全には読み切れなくて――」

「ハア? その根拠は?」


 男賢者ケンジ様は溜息をつく。


「…………こ、根拠は無いですけど。第六感っていうか! 僕達にはそういうのがわかるんです!」

「それを証明する事は?」

「しょ、証明!? 予言はそういうものじゃありませんっ! 信じる事が大事なんです!」

「であれば、我々は信じる事はできません。これからはどうぞ貴方ひとりでやってください。はい論破」


 男賢者ケンジ様に鼻で笑われて、僕の目に涙が滲む。

 彼が仲間に加わってからというもの、パーティー内での僕の立場は、悪くなる一方だった。


「ったくよお!? 高名な大予言者ケテルの孫っていうから連れてきてやったのに、とんだお荷物だったぜ、オイ!!」

「幸運値9999999ってステータスを見たときは驚いたけど、大した事無い雑魚だったわね!」

「そうそう荷物といえば、貴方の装備はここで没収させていただきますよ。我々が汗水垂らしたお金で購入したものですから」


 お金、それに、剣や防具まで奪われてしまう。


「ヒャハハハ! ひでーな! こいつ死んじまうんじゃねーの!?」

「野垂れ死ぬかどうかは半々でしょうが、彼は幸運らしいので。まあその幸運値9999999とやらで頑張ればいいんじゃないですか?」

「2年間ゴクローサマ! じゃーね、バイバイ役立たず!」


 そう言って、森の出口に向かってサッサと歩いていく、かつての仲間達、6人。僕は、慌ててみんなを呼び止める。


「ま、待ってください! そっちの方向は――悪い気配が溜まってるんですっ!」

「ばーか」

「『探知』の結果、この道には低級ザコモンスターしかおりません。安心して進みましょう」


 僕は、森の中でひとりぼっちになってしまった。

 去り際に、聞こえた勇者ユーシアさんの声が、いつまでも反響していた。


「ざまあみろ、アベル!!」

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